【週末はプラダでアート鑑賞を】メディアアートの先駆者『ダラ バーンバウム』の個展開催中
メディアアート、特にビデオインスタレーションの先駆者として知られるダラ・バーンバウム。プラダ 青山店では、彼女の個展が開催中だ。
ダラがビデオアートをはじめた70年代は、テレビの影響力が強かった時代。「テレビこそが、当時70年代半ばのアメリカの言語だとはっきり感じていました」と本人が語っているように、彼女は、マスメディアとそれに触れて生きる現代人のありようーーたとえば、テレビの出演者の身振りや表情や『刑事コジャック』『ワンダーウーマン』などに見え隠れする“アメリカ的なもの(あるいは、アメリカン・ドリームの光と暗部)”などを分析しながら創作を展開していった。
DARA BIRNBAUM
KISS THE GIRLS: MAKE THEM CRY, 1979
TWO-CHANNEL VIDEO INSTALLATION (COLOR, STEREO SOUND, 6:50 MIN.), TWO VIDEO SHIPPING CRATES
INSTALLATION VIEW, ART INSTITUTE OF CHICAGO, 2016
本展に展示されている 《KISS THE GIRLS: MAKE THEM CRY》は、かつて人気だったアメリカの長寿番組『ハリウッド・スクエアーズ』から、マイナーな女優たちの芝居臭い身振りや表情をピックアップした作品だ。
マルチスクリーンによる映像作品《ARABESQUE》は、ロマン派の作曲家夫婦、ロベルト・シューマンとクララ・シューマンの互いに結びついた創作人生が主題である。作品では、シューマン夫婦を描いた映画『愛の調べ』のワンシーンとともに、ふたりの楽曲(シューマンがクララに捧げた曲「アラベスク ハ長調 OP.18」と、クララがシューマンに捧げた「3つのロマンス 第1曲 OP.11」)を交互に流している(「アラベスク ハ長調 OP.18」はYouTubeにアップされた映像をサンプリングしているが、この作品の制作当時、妻クララが作曲した「3つのロマンス 第1曲 OP.11」は、ほとんどその投稿がなかったようで、女性の作家が除外されやすい仕組み、YouTubeなどのメディアの投稿数が優れた芸術性の希薄化につながっていることも、本作は暗示する)。