『<特権を問う>米軍、同意なく労働時間増 横須賀基地日本人警備員に一方的変更』へのみんなの感想まとめ
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◇説明会もなし 専門家「労働法に違反」
関係者によると、通知は1枚の紙切れだった。「勤務スケジュール並びに責務の変更に関する通知」と書かれた6月1日付の文書が職場に配布された。8月1日から「警備隊員を12時間交代の4シフト制に統一」すると記されており、理由を「米海軍憲兵との人員配置と訓練の連携」「部隊の結束力を高める」などと説明していた。
1回あたりの労働時間が4時間増えることについては「1カ月の労働日数は減り、柔軟性を高める」「家族や友人とより多くの時間を過ごす機会が得られる」とメリットを挙げた。これまでに、通知の紙以外に警備員に対し口頭などでの説明はないという。
横須賀基地には約150人の警備員がおり、1日8時間勤務の3交代制を取っている。40代の男性警備員は、12時間勤務になれば「体力的に不安がある」という。米軍憲兵との連携を理由にしていることについて「我々は民間人なのに、兵士の代わりにしようとしているように感じる。(12時間勤務になると)離職者が増えるのでは」と懸念する。
日米地位協定12条5項は、「別段の合意」をする場合を除き、賃金や労働条件、労働者の権利は日本の法令で定める内容が適用されるとしている。日本の労働契約法は、合理的な理由や労働者の合意なく労働条件を変更することを禁じている。全駐留軍労働組合(全駐労)横須賀支部は6月15日、雇用主にあたる防衛省を通して米軍側に説明会を開くよう求めたが、確約は得られなかった。
横須賀基地司令部広報は、変更の理由について毎日新聞の取材に「米軍の運用・作戦に関わることなので回答しない」とコメントした。防衛省南関東防衛局は「米軍基地内での米軍と従業員の間のやり取りについて政府としてコメントする立場にない」とした上で「一般論として、米軍は米側の所要に応じ、日本の労働関係法令に沿って勤務時間などを設定していると承知している」とコメントした。
同様の事態は他の基地でも起きている。米海軍佐世保基地(長崎県)では2020年6月、警備員に対し一方的に勤務時間を8時間から12時間に変更すると通知。全駐労長崎地区本部が説明や撤回を求めたが、同年8月以降、12時間勤務の体制が続いている。同本部の渡辺秀與副委員長は「米軍は警備員を米兵の代わりにしようとしているのではないか。警備員の業務がどこまでなのかを確認する時が来ている」と強調する。
警備員の労働環境を巡っては、19年に佐世保基地の警備員が米軍の指示で拳銃を持ったまま基地外の公道を歩き、地位協定と銃刀法違反にあたるとして問題となった。20年には横須賀基地で催涙スプレーを顔に噴射する訓練が日本人警備員に対して実施された。
基地内の労働問題に詳しい沖縄大の春田吉備彦教授(労働法)は「同意なく一方的に労働条件を変更するのは労働契約法違反にあたる。防衛省は日本の法律を守るよう米軍に要請すべきだ」と指摘する。その上で、米軍が銃の携帯など兵士と同様の訓練を警備員にも課すことについて「米軍の指示に従った結果、日本の法律に違反する可能性が出てくる。兵士と同じことをさせるなら、免責するよう国内法を整備すべきだ」と話す。【高田奈実】