極地建築家・村上祐資が考える、宇宙での暮らしって?
2023年1月に発表された《DAN DAN DOME EXP. STATION》。この宇宙基地を模した閉鎖空間では、今まではあまり注目されてこなかった宇宙での暮らしにフォーカスを当て、民間による研究が行われる。中心にいるのが極地建築家・村上祐資。これまで1000日間を超える極地での生活を行い、その暮らしを踏査してきた人物だ。
「学生時代は、都市計画や環境デザインについて学んでいました。その中で、興味をもったのが極地での建築生産。南極や宇宙などでは、輸送した資材を建設のプロではない観測隊員や宇宙飛行士が現地で組み立てる必要があり、環境的な制約も加わる。そのような状況ではどういったプロセスが最適なのかを研究していました。
ただ、机の上だけではスペック論に偏ってしまい、実際に現場を体験する必要があるなと。2008年に南極地域観測隊に参加したことから始まり、現在に至ります。人にとっての建築とは何なのか? 極地を通して日々そのテーマについて考えています」
《DAN DAN DOME EXP. STATION》は、村上が総合容器メーカー・東洋製罐グループと共同開発を行った組み立て式のダンボール製テント《DAN DAN DOME》をコアモジュールとしている。“おる“、”つなぐ“、”むすぶ“の3つの動作のみで組み立てられるように設計。2021年から販売され、アウトドアやイベントの場で使用されるほか、子ども向けのワークショップなどでも活用されている。
「これまでの経験から、建設作業の重要性を感じていました。南極での基地の改修など、隊員同士で行う共同作業を通してお互いの人となりを知る。そうして培った人間関係が、後の極地生活に良い影響を与えてくれるんです。そんな体験を子どもたちにもして欲しく、専門技術も工具も不要で、人力のみで組み立てることのできる《DAN DAN DOME》制作しました」
もう1つ、子どもをターゲットにしたことには理由があるという。
「子どもだけでも建設できることは大きな利点になると思いました。そうであれば、遠くない未来に宇宙で建設を行う際、宇宙服や重力などの制約があってもクルーは作業を行うことができるはず。宇宙開発に応用することを前提とし、どのような設計が最適なのかを《DAN DAN DOME》で研究していました」