抽象表現と自然界の構造との関係を探る画家・テリー・ウィンタース。「私自身の想像を超えたものとして絵画は完成する」
――今回出品している新作で、新たに試みたこと、展開したことを教えてください。
ウィンタース 今回の作品は、近年制作してきた作品の延長と言えると思います。それらは、膨大な量の小さなサイズの白黒のドローイングをベースとして制作されています。
ドローイングは私にとってかたちのボキャブラリーを作り上げることに関わっているのです。そして絵画は、これらのプロトタイプとしてのドローイングに含まれる可能性のある、意味や精神的な次元に到達するための視覚的なシステムとして機能しています。
――ウィンタースさんの絵画はとても明快な形態と色彩の関係を持っているように思います。たとえば、《Point Array》(2022)は、ドット(点)と色の面から成立していますが、ドットはピンクや赤で描かれ、その下の色面は青い色で描かれています。つまり、それぞれの要素が異なる色で描き分けられています。そこには、色彩と形態の関係の、とても明快な構造があると感じます。色彩と形態は絵画の構造にどのように関係していますか?
ウィンタース 色は、私が取り組んできたドローイングの文脈に、未知の要素やより野生的な要素を与えてくれるものです。そして、それぞれの色は、最終的なイメージのかたちを決定づける物理的、化学的な役割を持っていると思います。それぞれの絵画には、時間をかけて積層された構造があります。色はその時間のなかでなんらかの形で変化し、うごめき、私にとっても驚くような結果をもたらすのです。
――ドローイングの描線は、時間のなかで展開するものを示唆しています。しかし、色彩も時間的なプロセスを持つということですね。ドローイングと色彩の関係という側面から、絵画におけるプロセスや時間についてさらにお訊きできますか?
ウィンタース 色彩とは、時間を記録するものであり、絵画の構造に順序を与えるものでもあります。白と黒のみを使うためドローイングは限られた要素と短い時間の中で制作されます。そのため、はっきりとしたプロセス、時間の経過に分解することの難しい展開のなかで発展していくものだと思っています。変化は、ドローイングを描いてくまさにその過程のなかで、限られた範囲内で徐々に起こるわけですから。
それに対して、絵画にはより広い可能性が含まれています。絵画制作の際は、まず膨大な素材と手順の選択肢に向き合わなければなりません。そして色は劇的な変化と方向づけをもたらします。たとえば絵具の乾燥を待つという実務的な過程でも、それぞれの画材で異なる時間が必要です。絵具そのものが具体的なプロセスを要求するということですね。そしてその物理的な要求に取り組み、また戯れるなかで、新しい絵画の可能性が生まれてきます。そのあいだに、自分がどのようにイメージを構築していくか、という観点や絵画との関係性もつねに変化しています。情緒的に豊かで抽象的な環境をそこに見つけるよう努めています。