コロナ下で災害食人気、魚煮付けなど家庭料理の味も
奥田氏は令和2年6月、日本災害食学会が認証するメーカーなど23社(回答19社65品目)を対象に、令和元年1~5月と2年同時期の販売実績を比較。その結果、コロナ下で一時利用停止となった学校給食や飲食店で使う業務用の米以外は需要が増したという。
特に増加率が高かった商品は、主食系=レトルト米飯・おかゆ、アルファ化米・おかゆ、切り餅、パン、麺類▽魚・肉系=さば・いわし・赤魚加工品、おでん、鶏・牛の煮込み、豚汁▽野菜系=ジュース、スープ・シチュー、煮物▽おやつ系=米粉クッキーなど-で、種類の多様化と健康志向が顕著になった。
■家庭料理の味が人気
昨今の災害食人気について、奥田氏は「長期保存が可能、製造過程の安全性の高さ、人と接触せずに通販で買える、といったことがコロナ下の生活環境に合致した」と分析する。
さらに需要増がみられた商品のうち、魚・肉系と野菜系に着目。「『赤魚煮』は11倍、『根菜のやわらか煮』は32倍、『里芋の鶏そぼろ煮』は20倍に販売が伸びた。食卓に出るメニューが豊富に商品化され、災害食への抵抗感がなくなった」とみる。
また、アルファ化米や野菜スープは種類が多いことから、セットでの販売が目立つといい、「コロナ下での生活が長期化するのに伴い、消費者は飽きがこない商品を選んでいる。また、野菜の煮物やスープ・シチューなどは調理の手間が省け、健康維持に役立つことが消費意欲を刺激した」と推測する。
■加熱器で避難生活向上
コロナ下の災害では、感染を避けるために分散避難が求められている。避難生活では炊き出しなど温かい食事の提供がストレス軽減に必要とされているが、多くのボランティアが駆け付け、支援物資による炊き出しを行った場合、普段以上の感染対策が欠かせない。
こうした場所で奥田氏が推奨するのは、発熱剤に水を投入するだけで湯が沸かせたり、食物やレトルト食品を温められる簡易加熱器だ。重量は130グラムとコンパクトで保管しやすいメリットもある。奥田氏は「数多くの被災者の声が反映され、災害食は進化した。コロナ下の生活を機会に各家庭で試行錯誤してほしい」と呼びかけている。(編集委員 北村理)