空前のブームを巻き起こした映画『THE FIRST SLAM DUNK』が、時と国境を超えて熱狂を呼ぶ理由とは
日本のみならず、中国や韓国でも大ヒットとなった映画『THE FIRST SLAM DUNK』。原作マンガの連載開始は1990年ともはや古典の領域にある作品ながら、時と国境を超え、いまだ人々に熱狂をもって受け入れられるのはなぜなのか。『スラムダンク』ならではの描写と記号に着目し、普遍的なメッセージを読み解く。
数々の名作、秀作が生まれてきたマンガの世界でも、その中にさらにひときわ高くそびえ立つ「歴史的作品」というものがある。井上雄彦(たけひこ)氏のマンガ『スラムダンク』が、そうした作品のひとつであることは、皆が認めるところだろう。
その物語は現代でもなお輝きを増している。2022年12月には原作者の井上氏自身が監督、脚本を担当した劇場版アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開。国内でも2023年5月の時点で興行収入138億円を突破する大ヒットとなり、さらには中国や韓国でも多くのファンを集めている。
特に中国では日本や韓国を上回る観客動員を見せ、公開初日だけで290万8000人を超える人が鑑賞し、4日後には1000万人を突破したという。
その人気は政治の世界からも注目され、中国の呉江浩(ウー・ジャンハオ)駐日大使が日本記者クラブでの記者会見で『スラムダンク』について言及したほど。それまでは地政学的な緊張関係にある日中両国の現状を反映して厳しい口調だった呉大使だが、作品の話題になると表情を和らげ「中国で大好評であり日本国内以上に人気を博している」などと語った。
マンガ『スラムダンク』は「少年ジャンプ」誌で、1990年に連載が開始された。主人公は桜木花道。赤い髪の不良少年だった彼は、湘北高校に入学。そこで赤木晴子という少女と出逢い、彼女に勧誘されたことをきっかけに調子よくバスケット部に入部してしまう。
最初は基礎練習を嫌がって部活を抜けたりしたが、やがてその面白さに目覚め、自分のことを「バスケットマン」と自覚するようになっていた。そして仲間のため、なによりライバルに勝つために練習に打ち込んでいく。
作中では彼だけではなく、バスケットを通して高校生たちの、前向きに成長していく姿が描かれる。その物語は娯楽として抜群に楽しいだけではなく、読む人の胸を熱くする普遍的なメッセージを持っていた。
たとえば、