足元へ降り立つ「みる誕生」。『美術手帖』1月号は鴻池朋子特集
鴻池朋子
。『美術手帖』2023年1月号では、現在、静岡県立美術館で開催中の「みる誕生 鴻池朋子展」(2023年1月9日まで)を起点に、今日の芸術に対する問題提起と鴻池の表現について掘り下げる。
巻頭インタビューでは、高松市美術館を皮切りに3つの美術館をリレーしていく個展「みる誕生」を契機とし、鴻池のこれまでの活動や展覧会をつくる際の試行錯誤、そして本展を通じてアーティストとして生きることについて語られる。
本展と連動して、鴻池の現在の活動を読み解く6つの切り口にフォーカスを当てた記事も掲載。「01 みる誕生会」「02 筆談ダンス」「03
糞土思想とミュージアム」「04 物語るテーブルランナー」「05 大島と金陽会の絵」「06
『逃走階段』と『緑の森の一角獣座』」、それぞれのテーマについて鴻池と関わってきた人々が語るというものだ。
「鴻池朋子のストラクチャー」では、鴻池が長年感じていたという「見る人たち」の素材や作品の構造に対する関心の薄さにたいして、鴻池自ら作品の骨組みについて書き記す。作品制作の過程で鴻池が見たものや感じたものごとに、ふれることのできる内容となっている。
特別企画の池澤夏樹との対談「目でないものでみる 耳でないものできく」では、約1年にわたる新聞連載「ワカタケル」でタッグを組んだ2人の対談が実現。「既存の美術、見る呪縛、近代文明、言葉や文字の拘束から、われわれはどう逃れ、道を歩いていけるのだろうか」をテーマに、身体の感覚を頼りながら、人間界と自然界の境界線から手探りする試みと、その先の風景について会話を交わしている。
ほかにも「岡山芸術交流2022」で巨大なクマのぬいぐるみを水の抜かれた小学校のプールに設置したプレシャス・オコヨモンのロングインタビューや、日系移民2世でカリフォルニアに生まれ、強制抑留キャンプに収容されたアーティスト、ルース・アサワについての沢山遼による論考もお届けする。