熊本地震で寄贈増え、博物館の収蔵庫「満杯」…今あるもの残す役割だが断る場合も
本物そっくりの人形「活人形」や、故人の霊を浄土に送るための精霊船、昔使われていた農機具――。収蔵庫の天井まで達する棚は隙間なく埋まり、寄贈品が床にも置かれていた。残る収蔵スペースは約60平方メートルで、全体の約5%しかない。
「『今ここにあるもの』を幅広く残すのが博物館の役割だが、苦渋の選択で受け入れを断ることもある」。清水稔学芸員は漏らした。
同館は18年に新装開館し、館内の収蔵スペースは約500平方メートル増え、約1200平方メートルとなった。「20年は持たせたい」と余裕を持たせたはずだったが、熊本地震の影響は大きかった。
市内は震度6強の揺れに襲われ、住家の全半壊は1万7675戸に上った。歴史ある城下町が広がるだけに、蔵などが壊れ、保管できなくなった美術品や道具類が16年度だけで約880点持ち込まれた。被災した家の建て直しなどに伴って、その後も資料の寄贈が続いている。
そのため、場所を取る大きな物などは受け入れを断ったり、他の博物館を紹介したりすることもある。収蔵品を整理して空きも生みだし、「今あるスペースの延命を図っている」という。
敷地内のプレハブ収蔵庫(2階建て)に中2階を設けて約150平方メートル広げる改装も検討しているが、費用がネックとなっている。坂本康祐副館長は「財政は厳しいが、熊本の自然や文化を未来につなげていくため、色々な方法を検討したい」と話す。
日本博物館協会の19年度の調査では、回答した2314館の57・2%が「ほぼ満杯」「収蔵庫に入りきらない資料がある」と答えた。前回13年度より約10ポイント高くなっており、新たな収集への影響が懸念されている。