世界遺産の前庭、当初に近い姿に 国立西洋美術館が9日再オープン
同館の前庭はオープン以来、美術館としての機能を追求する中でさまざまな改変が加えられ、正門も当初の西側から南側に変更された。部分的に植栽に覆われ、閉鎖的印象もあったことから、2016(平成28)年に本館と前庭を含む敷地全体がユネスコの世界文化遺産に登録された際には、「前庭の顕著な普遍的価値が減じられている」と記された。
福田京専門員によると、同館はちょうど中庭の地下にある企画展示室の防水の更新時期にあたり、「世界遺産の価値を高める復原」として前庭のリニューアルを決断。植栽を最小限とし、ロダンの彫刻「考える人」「カレーの市民」を当初の位置に戻した。また、正門は変更しないものの、西側の門からのアプローチを整備し、敷地を囲う柵(さく)も透過性の高いものに変更、上野公園や向かいの東京文化会館との一体感を高める工夫をした。細かいところでは、ル・コルビュジエが考案した尺度「モデュロール」に割り付けられた地面の目地の復原も。巨匠の本来の設計意図に従い、広々としたオープンスペースがよみがえった。
同館はリニューアルを機に、本館の吹き抜け大空間「19世紀ホール」の無料開放も決定。同館設計に関わったル・コルビュジエと弟子たち(前川国男、坂倉準三、吉阪隆正)こだわりの建築空間を体感できる。
同館はあすから常設展と小企画「調和にむかって ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ」展(9月19日まで)などを開催。常設展の観覧料(一般500円、大学生250円)で鑑賞できる。また、6月4日からリニューアルオープン記念展「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」を予定している。(黒沢綾子)