千年続く野馬追にかける20歳の女性武者「全力でやり切る」 3年ぶり通常開催で最後の出陣【福島発】
野馬追に1年出られなかったことを「悔しい」と話す大木戸琉菜さん(20)。
2021年の相馬野馬追は、新型コロナウイルスの感染拡大により規模を縮小。神旗争奪戦や甲冑競馬は見送られ、南相馬市では神事だけが行われた。野馬追への女性の参加条件は「未婚の20歳未満」で、19歳だった大木戸さんにとって出陣する最後の機会だった。
大木戸瑠菜さん:
昔からの伝統で年齢制限がされているので、そこは何とも言えない。それも伝統なのかなって思います
叶わなかった出陣…。野馬追の執行委員会は2022年、3年ぶりに通常規模での開催を決定。大木戸さんを含めた5人の女性武者の思いをくみ、特例措置として「20歳・21歳の未婚女性」の出場を認めた。
大木戸瑠菜さん:
出られなかった分、出させてもらえるって、すごくうれしくて。今年が最後なんだからと思って、(甲冑)競馬と旗獲り(神旗争奪戦)はもう「やり切ろう」と思って練習してきました
7月23日、南相馬市の北郷騎馬会。
アナウンス:
相馬もののふの心意気、一挙手一投足を余すことなくご照覧いただきますよう、お願い申し上げます
総大将を迎え入れる「北郷陣屋」。出陣を果たした大木戸さんは、ほら貝を吹く「螺役(かいやく)」を担う。
アナウンス:
初陣にして凜々しくも威風堂々の着陣でございます
相馬家第33代当主・相馬和胤さんの孫・言胤(としたね)さん。新たな総大将として伝統を受け継ぐ。
相馬言胤 総大将:
度重なる災害、疫病からの早期の復興を願い、全騎馬を会場に向け威風堂々進軍してほしい
3年ぶり、そして新たな総大将の初陣を飾る行列。大木戸さんも、ほら貝の音で隊列を整えながら雲雀ヶ原祭場地へと向かう。
そして7月24日、迎えた本祭り。
念願だった「甲冑競馬」に緊張が高まる。大木戸さんは最初の出走。静かにその時を待つ。
大木戸瑠菜さん:
スタートを切った瞬間に吹っ切れて「行くぞ」という感じで。乗っている馬が、力強く走ってくれるのを信じていました
まさに人馬一体。風を切りながら駆け抜け見事、1着をつかみ取った。
大木戸瑠菜さん:
1着になると思っていなかったので、練習した成果が出たのかなと思います
羊腸の坂を駆け上り、総大将のもとへ。観客から大きな拍手が送られた。
コロナ禍前と変わらない騎馬武者の思いと熱気に包まれた相馬野馬追。大木戸さんも全てを出し切った。
大木戸瑠菜さん:
悔いはなかった。自分でもちゃんと楽しめた野馬追だったのでよかったなと思います
大木戸さんの心に刻まれた最後の出陣。今後は支える側として伝統を守り続ける。
(福島テレビ)