受験リポート 「数学不得意だから文系」でいいの?
文系と理系の決定は受験科目にも直結するだけにそういう判断も分からなくはないが、進路にかかわる大きな判断にもなるので、教育関係者たちは「自分の目指したい道は何なのかを考えて文理選択をしてほしい」と口をそろえる。
「文系と理系はなぜ分かれたのか」などの著書がある東京大大学院の隠岐さや香教授によると、「海外に比べ、日本の場合は文理の溝が深い」と指摘する。
文系と理系という枠組み自体は海外諸国でも見られるというが、大学進学後も文理の壁を越境できる仕組みがあったり、専攻内容を決めるまでは大学で文理で分かれずに学ぶことができたりするという。大学で複数の分野を専攻する米国のダブルメジャー制度もよく知られる。
隠岐教授は「日本の場合、大学受験に向けて文理を選択し、後から変更がきかない。柔軟性のなさは問題だ」と指摘する。
なぜ日本だけがこれほど遊びのない制度になってしまったのか。国内で文系と理系が明確に表記されたのは1918(大正7)年までさかのぼる。
第二次学校等学校令で、「高等学校高等科ヲ文科及ビ理科トス」との記述があり、近代化を急ぐ日本で、法務を扱う官僚と技術官僚を即席で効率よく育てるため、大学が法と工学の実務家を選抜、育成する機関としての役割を担ったことが背景にあるという。
近年は、文理融合の学部ができるなど、文理にとらわれない視野を持つ人材を育成しようという動きもある。隠岐教授は「文理を分ける大学受験は諸外国の動きに伴い、今後緩和されていくかもしれない」と話す。
ただ、隠岐教授は「安易な文理融合」にも警鐘を鳴らす。「幅広く学べるというのは、ともすれば『広く浅く』になりかねない。色々なことを学びながら自分の学びたいものを見つけ、専門に特化していけるのがいい」と話す。当然のことだが、大学に入るだけではなく、どう学ぶかが肝心ということだろう。