『中3刺殺事件 14歳少年の「心の闇」と「学校の対応」の違和感』へのみんなの感想まとめ
11月24日、愛知県弥富市の市立中学校で、3年生の伊藤柚輝(ゆずき)くん(14)が同級生の男子生徒Aくん(14)に刃物で襲われる事件が発生した。愛知県警はAくんを殺人未遂で現行犯逮捕。伊藤くんは搬送先の病院で死亡した。捜査関係者が語る。
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「凶器となったのは刃渡り20㎝の刺身包丁。一突きで肝臓を貫通しており、強い殺意が窺(うかが)えます。犯行動機はいじめ。『友人と話している時に割って入ってこられて嫌だった』『伊藤さんが役員に立候補した昨年9月の生徒会選挙で応援演説を押し付けられた』など、嫌がらせを受けたと証言しています。最後の決め手は11月中旬の修学旅行。Aくんは禁止されていたスマホを持ち込み、没収されています。本人は同級生からリークがあったと話しており、疎外感を感じたようです」
しかし、取材を進める中で浮かび上がってきたのは凄惨な事件とは縁遠い、純朴な人物像だった。
「Aくんはオンラインゲームが好きな大人しい子でした。部活はバレー部に所属。小学校時代はサッカー部で、伊藤くんと一緒のチームでした。対して伊藤くんはクラスのリーダー的存在。大の阪神タイガースファンで、中学から入った野球部でも活躍していました」(同じ中学校に通う生徒)
近隣に住む男性は、家族仲を明かす。
「家族関係は良かったと聞いていますよ。兄が一人に、両親、祖父母、さらに曾祖母という7人家族です。お祖父さん、お祖母さんとも元市役所職員。父親は4年前まで地元の自治会長を務めていた。近所ではちょっとした名家でしたよ」
裕福な家庭に育ったどこにでもいる少年。そんなAくんが、なぜこのような犯行に及んでしまったのか。元埼玉県警捜査第一課警部補の佐々木成三(なるみ)氏が語る。
「たとえ小さな不満でも、大人と違い、人生経験の少ない子供は溜め込んでしまう。近年の少年犯罪の傾向として、必ずしも加害者は過去に問題を起こしたり補導歴がある子ばかりではない。むしろ大人しい子が突然、逸脱した行為を起こす”突発型犯罪”が増加しているんです」
◆「トラブルは把握していない」
事件発生当日の夜、学校側は緊急記者会見を開いた。事件の経緯と共に焦点となったのは「いじめの有無」だ。これについて、会見に臨んだ校長は「トラブルがあったことは把握していない」と説明した。しかし、5日後の11月29日に開かれた記者会見で、その発言は覆(くつがえ)される。
「今年2月に行った生活アンケートで、Aくんが『いじめられたことがある』と回答していたことがわかったんです。さらにその事実を市の教育委員会に伝えていなかったこと、動機として挙がっている昨年9月に行われた応援演説の翌月に実施されたアンケートを紛失したことも発表されました」(全国紙社会部記者)
会見では「適切な指導で対応できた」と繰り返した学校側。だが、実は同中学校でいじめ問題が表面化するのは、今回が初めてではない。’09年、別の男子生徒が同級生から暴力行為を受け、右腕に大怪我を負うトラブルが発生した。生徒はいじめを学校側に訴えていたが無視され、負傷した右腕には後遺障害が残った。この事件は’12年7月に2171万円の損害賠償請求に発展。’13年12月に弥富市が和解金100万円を支払うことで決着した。
2度目のいじめ事件が発生した同中学校。29日の会見翌日、学校へ向かうために自宅を出た校長に声をかけた。
――当初、事件の原因について思い当たる節がないと発言されたのはなぜですか。
「最初に読んだ資料にはそういった事実は見当たりませんでした。担任も事情聴取中で、確認ができなかったんです」
――アンケートはなぜ無くなったのか。
「会見前日に職員総出で探しました。見つかってないこと以外、答えられない」
――改めて学校側の指導は適切でしたか。
「そうです。対策は間違いなく適切でした」
教育学や少年犯罪を研究する、東京電機大学の山本宏樹准教授は学校側の対応について、こう指摘する。
「弥富市が定めるいじめ防止基本方針には、教育委員会への報告義務や、アンケート調査の保存義務が書かれていますが、今回、学校側はそれらを達成できていない。これは明らかな落ち度です。今後は第三者委員会が組織され、教育委員会を含めて、どこに問題があったか調べられていくのではないでしょうか」
一刻も早い真相究明が求められる。
『FRIDAY』2021年12月17日号よりFRIDAYデジタル