ヴィンテージはどうして私たちを魅了するのか、NIGO(R)が示す答え
10月14日ロンドンにあるナショナル・ギャラリーで、環境活動団体「Just Stop Oil」のメンバーが、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープ投げつける抗議騒動を起こした。彼女たちはオレンジ色に汚れた「ひまわり」の前で、イギリス政府に対し「芸術と命のどちらが大事か」を問いつつ、石油・ガスの新規開発中止を求める主張を行った。ここで彼女らの是非を問うことはしないが、芸術(あるいは芸術というイメージ)を破壊することで世界の全体性へ干渉しようとする行為は、過去に様々な革命的場面や映画のワンシーンの中で繰り返し行われてきた。現在、彼女たちだけに限らず世界中の至る所で「未来の危機」が叫ばれ、世界を変えたいと考え活動する人たちがたくさんいる。この展覧会を企画したNIGO(R)についてはもはや説明する必要もないと思うが、もともと「ア ベイシング エイプ(R)︎(A BATHING APE(R)︎)」の創業者として裏原宿カルチャーを世界に知らしめ、2021年9月にはLVMH傘下の「ケンゾー(KENZO)」アーティスティックディレクターに就任したことで世間を賑わせ、絶え間なく注目を集め続ける日本を代表するファッションデザイナーの1人である。またこの展覧会は、NIGO(R)がケンゾーのアーティスティックディレクターに就任したことを機に、高田賢三の軌跡を踏まえ、若者に向けて「自分にも何か出来ることはないか」という思いのもと実現されたとのことだ。展覧会開催に添えられたNIGO(R)のあいさつ文の中には下記のようにある。
展覧会のタイトル、未来は過去にある“THE FUTURE
IS IN THE PAST”は、僕のモノ作りのテーマそのものです。
少し悲観的な物言いになるが、この非常に分かりやすくまとめられた彼の信条を、現実の社会状況と照らして受け止めると、なかなかシリアスな意味となるのが今現在の世相である。いずれにしても、先輩である高田賢三とNIGO(R)という連なりによって実現してい
るこの展覧会に対し、私も後輩として微力ではあるが何かしら応答を試みたい思う。