「沖縄戦の図」伝える映画完成…画家夫妻、集団自決や逃げ惑う子ども描く
戦争や水俣病などの社会問題を描いてきた丸木夫妻は晩年、「沖縄の体験から平和を学ぶ必要がある」と考え、1982年から87年にかけて沖縄に通い続けた。戦争体験者の証言に触れたり、沖縄に関連する160冊以上の書籍を読んだりして連作を仕上げた。
最も有名なのは、縦4メートル、横8・5メートルの水墨の大作「沖縄戦の図」だ。米軍が最初に上陸した慶良間諸島などで家族や親類同士で命を絶った「集団自決」、追い詰められて血で染まった海に沈んでいく人々、逃げ惑う女性や子どもたち――。一面に描き出された戦の記憶が見る者を圧倒する。
昨年6月の沖縄全戦没者追悼式では、この絵を目にした小学2年の女子児童が「こわいをしって、へいわがわかった」と題して、平穏な日常の尊さをつづった詩を朗読した。
映画は「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部」。2020年から約3年かけて製作したカラードキュメンタリー(88分)で、ひめゆり学徒隊の慰霊碑「ひめゆりの塔」や集団自決があった読谷村の壕「チビチリガマ」などもテーマにした絵画14部を紹介した。
夫妻で息を合わせ、即興にも見える勢いで描く独特の制作風景を撮影した写真や映像も使われた。渡嘉敷島の集団自決を生き延びた元渡嘉敷村教育委員長、吉川嘉勝さん(84)ら丸木夫妻に体験を証言した人など16人のインタビューを交えて構成されている。
河邑監督は1日の記者会見で撮影を振り返り、「絵画は2次元だが、(沖縄戦の)現場にいると錯覚するほど細かいところまで描かれている」と述べた。