和菓子づくりのお稽古をレポ【菅野麻子の奈良の通い路和稽古ことはじめ「り」】
実は、煎茶道美風流に入門するまで、和菓子を好んで食べた記憶がほとんどありません。口や喉が乾く「すごく甘い食べ物」という認識どまりで、どちらかといえば苦手なお菓子だったことを白状しましょう。さらに告白してしまえば、「煎茶道」という名前を知る以前に、自らすすんで緑茶を口にしたこともないかもしれません。私にとって至福の飲み物といえば、紅茶やコーヒー。一緒にいただくチョコレートやクッキーのなんと美味しいことか。以前、イギリスの友人の家で、日本ツウの夫婦が朝食に緑茶を飲んでいるのを目にして心底驚愕し、「私はカフェラテが飲みたい」と懇願したこともありましたっけ。私のかたくなな嗜好性に変化がみられたのは、美風流お点前による煎茶と、お家元のお嬢様の手作り和菓子をはじめていただいたときでした。
お稽古でいただく上生菓子は、いつもとても愛らしく、思わず笑みがこぼれてしまいます。そして、四季折々の移ろいを視覚的に伝えてくれる繊細なお菓子は、甘すぎず、とっても優しいお味。自然栽培の茶葉を使用する美風流の煎茶を引き立て、素直に「煎茶って美味しい」「和菓子って美味しい」と感じさせてくれるのです。そんな、にわか和菓子好きへと変貌した私が、お嬢様じきじきにお菓子づくりを習う機会に恵まれました。
お家元のお嬢様の茅さんと華穂さんは、美風流本部のビルで、「茶・アートカフェうつぎ」を運営する仲良し姉妹です。カフェで提供されるお菓子に加え、美風流のお茶会やお稽古のお茶菓子は、10年以上前からすべてお嬢様の手づくりだそう。お茶会では、お家元のテーマが決まると、お嬢様が掛け軸や設えをもとに、お菓子の制作イメージを膨らませていくのだとか。
さらに、さすがお家元の志の高さを引き継いでいらっしゃる…と、うなったのは、お嬢様からお稽古用のお菓子のテーマをいただいたときのこと。ただ季節のお花をつくるのはつまらないので、「どんなお菓子をつくるか自分で考える」という出題。しかも、題材は、前日に参加するお家元のお稽古の講義テーマから引用するように、とのこと。その講義のテーマは「陰陽五行」です。この間まで和菓子が苦手だった和菓子づくり初心者には、だいぶハードル高くないでしょうか?笑