小豆島に新たにオープンした〈醤の郷現代美術館〉を徹底レポート。
小豆島の東南部、草壁港と坂手港の間にある「醤の郷」は400年の伝統ある醤油造りで知られる街だ。数多くの醤油蔵が立ち並び、もろみの香りが漂う。その一角にある〈醤の郷現代美術館〉は「小豆島アートプロジェクト」が運営する美術館。『瀬戸内国際芸術祭2022』に合わせて2022年4月、グランドオープンを迎えた。
美術館があるのは1928年に「小豆島醤油製造同業組合」の事務所として建てられた建物。小豆島で最初の鉄筋コンクリート建築だ。2階建ての洋館は1962年から92年までは〈小豆島町立図書館〉として使われていた。
「小豆島醤油工業組合」の看板があるエントランスを入ると中川浩《錦秋の寒霞渓》が出迎える。寒霞渓は今年、青木野枝の作品である展望台が設置された小豆島の名勝だ。
1階ではアーティストが部屋をまるごと作品化したスペースが続く。海に沈む夕陽や咲き誇る花を描いた河野ルルは世界放浪の間、メキシコで旅費を使い果たし、宿の壁に絵を描いたことがきっかけで画家になったというユニークな経歴の持ち主。小豆島に2週間ほど滞在し、海と、それに向き合う自然を壁に描いた。
その先の1階と2階の展示室にはクリストとジャンヌ=クロード、杉本博司、磯崎新、ジュリアン・オピーらの作品が並ぶ。この美術館のコレクションは総数およそ500点、そのうちの100点あまりを展示している。驚くのはこれらの作品をわずか3年ほどで収集しているということ。この美術館を運営する「小豆島アートプロジェクト」のリーダー、石井純は全国のギャラリーやアートオークションに参加するなどして作品を集めたという。版画などが多く含まれるとはいえ、このスピードは尋常ではない。