福島・旧二本松藩の「戒石銘」、異郷の地で警察官が受け継ぐ 埼玉県警交通機動隊に石碑
■誠実で謙虚な心構え
ひときわ目を引く石碑が県警交通機動隊の施設の一角にある。
石碑に刻まれた文字を読んでみると、旧二本松藩戒石銘碑に記された文字と同じ4句16文字が並んでおり、「爾(なんじ)の俸 爾の禄(ろく)は、民の膏(こう) 民の脂(し)なり、下民(かみん)は虐げ易きも、上天(じょうてん)は欺き難し」とある。
俸禄は現代では給料に相当するもので、4句16文字は、民が苦労して働いて生み出したものを受け取る武士に対して、民に感謝し、民をいたわらなければ天罰が下ることを説いているとも解釈できる。戒石銘は、誠実でかつ謙虚に職務に臨むことが求められる警察官にとって欠かせない心構えの一つといえる。
■石碑は有志で寄贈か
県警は石碑が設置された経緯について、設置時期に勤務していた隊員らがすでに定年退職していることなどから詳細は不明としているが、同隊の担当者は「二本松市を訪れた当時の隊員が戒石銘の心構えに感銘を受け、有志で石碑を寄贈したのではないか」と推測する。石碑には当時、同隊の隊員だったとみられる人物の氏名が刻まれている。碑によると、昭和54年3月に設置された。
4月21日。新任隊員訓練を終え、翌日から現場での活動を控えた隊員に向けて、同隊の西脇大輔隊長は施設内にある石碑に刻まれている言葉を踏まえて、こう訓示した。「警察は県民のためにあるということを常に心に刻んで、初心を忘れないこと。悲惨な交通事故を1件でも減らすため、職務に邁進(まいしん)しなければならない」。時代を問わず通じる心構えは、県民の交通安全を守る新任隊員たちの心に刻まれていた。(星直人)