【今見るべきアート展】エゴン・シーレの回顧展<2023年2月>
エゴン・シーレは、19世紀末、ウィーンで隆盛をきわめた芸術的、文化的ムーブメント、いわゆる「世紀末ウィーン」の代表作家のひとりだ。巨匠クリムトも認めた天才。自画像を含め、とりわけ人間の内なる部分、エロスや狂気をあぶり出すような絵画を多く残した、ナイーブでスキャンダラスな画家。28歳にしてこの世を去った夭折の芸術家ーー。さまざまに語られてきたシーレだが、実際には、どんなふうに時代を生き、何に突き動かされて創作活動を展開したのか。本展は、シーレの世界的なコレクションをもつレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、油彩画やドローイング、言葉などからシーレの激動の人生を総覧する。
こうしたシーレの回顧展は、日本では30年ぶりの開催となる。見どころは、シーレが執着した「自画像」のなかでも代表作と呼ばれる《ほおずきの実のある自画像》、クリムトの影響を受けた学生時代の作品《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》、スペイン風邪で死する1918年に制作した未完成の作品《しゃがむ二人の女》など。もちろん、卓越したシーレの才能は自然に開花したのではなく、当時のウィーンに興った新しく革新的なムードも後押ししたの事実だ。本展では、クリムトやココシュカら同時代のウィーンの画家たちの作品、彼らが牽引した芸術的動向にも触れながら、シーレという夭折の天才に広く光をあてる。
『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』
@東京都美術館
開催中。4月9日(日)まで。
BY MASANOBU MATSUMOTO