没後50年のピカソ作品をポール・スミスがキュレーション。パリの〈ピカソ美術館〉で3月スタート。
ピカソとポール・スミスの間にはいろいろな共通点がある。オブジェやファッション、舞台への偏愛と興味、遊び心と見る人を微笑ませるユーモア、そしてなんと言ってもそのオリジナリティだ。アートとファッション、ジャンルは違うけれど、2人とも他の誰もが思いつかないようなアイデアを次々と形にしてきた。
今回のポール・スミスがキュレーションするピカソの展覧会では、2021年に館長に就任したセシル・ドブレーとともに、同館が所蔵する5000点以上ものコレクションから名品をセレクト。ピカソが長い生涯で編み出してきた多彩な表現を、これまでとは違った視点で見ることができる。早熟で知られるピカソは13歳で身近な人やものをモチーフにした風刺雑誌を作っていた。後に彼はとりすましたファッション写真に数本の線を引いただけでグロテスクなイメージに変えてしまうといった、茶目っ気のある“作品”もつくっている。
ピカソがキュビスムを創始したのは1906年のこと。イベリアの芸術やローマ彫刻、オセアニア・アフリカのアートなどがインスピレーション源だった。セザンヌの「自然界のものを円柱・球・円錐で表現する」という理論からも影響を受けている。ピカソはジョルジュ・ブラックとともにキュビスムのさまざまな可能性を追求した。
ブラックとは1910年代からパピエ・コレ(コラージュ)の技法にも取り組む。始めは紙などを貼り込むものだったが、後には立体物もコラージュされるようになった。こうしてピカソは絵画と彫刻、アートとオブジェの境界を突き崩していく。
「青の時代」の絵はさまざまな濃淡の青で描かれたメランコリックなもの。ピカソはこれらの絵で乞食、売春婦など社会の下層に追いやられた人々を普遍的なものとして表現している。