19世紀の中国社会の諸相を紐解く。大英博物館が世界初の展覧会を開催へ
本展は、大英博物館とロンドン大学が中心となり、イギリスの芸術・人文科学研究会議(AHRC)の支援を受けながら4年間かけて実施した研究プロジェクトの成果発表展。14ヶ国から集まった100人以上の研究者の協力によって実現し、同館の所蔵品と、イギリス国内外の30ヶ所から貸し出された300点の品々で構成される。ほとんどの作品は初公開となるという。
展覧会では、1796年に清朝第5代皇帝の嘉慶が即位してから、1912年に第10代皇帝の溥儀が退位し、革命的な共和制に移行するまでの中国の「長い19世紀」に着目。この100年以上のあいだ、清朝はイギリスとのアヘン戦争などの対外戦争や内戦に見舞われたが、様々な出来事や人々によって、近代化への道を大きく切り開くことになった。本展では、宮廷、軍隊、芸術家、作家、農民、都市住民など、この混乱期を生き延びた様々な社会階層や経済集団に関する品々を通して、この時代の諸相を紐解くことを試みる。
1861年から1908年まで中国の実質的な支配者であり、ヴィクトリア女王と同時代に活躍した慈禧皇太后が所有していた華やかな衣裳から、当時の露天商や農民、漁師のためにつくられた麦わら帽子まで、中国帝国末期の社会のあらゆる階層で栄えた卓越した職人技を浮き彫りにする。
大英博物館の中国部門長で中国陶磁器・装飾美術のキュレーターであるジェシカ・ハリソン=ホールは声明文で、「本展では、清朝時代の多くの市民が非常に困難な状況のなかで発揮した創造性と回復力に焦点を当てることを目的としている」とコメント。
また、本展のプロジェクト・キュレーターであるウェンユアン・シンはこう付け加えている。「私は、中国の芸術と文化においてしばしば過小評価されがちな時代を探求し、物語る機会を得たことを嬉しく思っている。中国は100年余りのあいだ、王朝時代の帝国から近代的な共和制国家へと変貌を遂げた。この展覧会を通じて、この過程の人間ドラマ、複雑さ、葛藤を伝えたい」。