マネから異性装、カラーフィールド、触れる展覧会まで。今週末に見たい展覧会ベスト12
19世紀フランスを代表する画家、エドゥアール・マネ(1832~83)の日本における受容について考察する展覧会「日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ」が開幕する。
日本に所在する17点のマネの油彩画(パステル画を含む)のうち7点のマネ作品を中心に、印象派や日本近代洋画、そして資料などの約100点を通して、明治から現代にかけての日本におけるマネ・イメージに迫る。
また、本展では現代の日本におけるマネ・イメージを探るために、森村泰昌や福田美蘭といった現代美術家の作品も展示し、それぞれ独自の視点で展開するマネ解釈も紹介される。
会期:2022年9月4日~11月3日
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
電話番号:03-5848-3320
開館時間:10:00~18:00
休館日:月(9月19日、10月10日は開館)、9月20、10月11日
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 800円
日本における異性装の系譜をたどる。「装いの力ー異性装の日本史」(渋谷区立松濤美術館)
一般的に言われる「男らしさ」「女らしさ」とはなんなのか。日本における異性装の系譜をたどり表現を探ることで、異性装という営みのこれまでとこれからを考える「装いの力ー異性装の日本史」が東京・渋谷区立松濤美術館にてスタートする。
「男女」という、人間を2つの性別で区分する考え方は、今日の社会においても深く根付いている。そのなかで人々は、身にまとう衣服によって性の境界を越える試みをしばしば行ってきた。本展は絵画、衣裳、写真、映像、マンガなど様々な作品を通して各時代の異性装の様相を通覧し、性の越境を可能とする「装いの力」について考察することを促すものだ。
『古事記』から戦国時代の女武者、江戸時代の若衆、能、歌舞伎、さらに現代美術においては森村泰昌の「女優シリーズ」や、ダムタイプの《S/N》記録映像などを通じて、異性装の系譜を考察していく。
会期:2022年9月3日~10月30日 ※会期中一部展示替えあり
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
電話番号:03-3465-9421
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月(9月19日、10月10日は開館)9月20日、10月11日
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円
※土日祝、会期最終週は日時指定予約制。詳細は美術館HPにて公開。
東北芸術工科大学の開学30周年記念。「ここに新しい風景を、」(東北芸術工科大学内ギャラリー)
1992年4月に開学した山形県唯一の芸術大学・東北芸術工科大学が今年30周年を迎えた。これを記念した企画展が「ここに新しい風景を、」だ。
同大芸術学部美術科日本画コース専任講師の小金沢智がキュレーションを手がける本展。7階のギャラリー「THE
TOP」では「ここに新しい風景を、」を全体のコンセプトに据え、8組の卒業生、ひとつのプロジェクト(チュートリアル)で展示を構成。
出品作家は、アメフラシ、飯泉祐樹、F/style(五十嵐恵美、星野若)、かんのさゆり、近藤亜樹、近藤七彩、多田さやか、西澤諭志。また「東北画は可能か?」より12号作品が多数展示予定となっている。
会期:2022年9月3日~25日
会場:東北芸術工科大学内 1階ギャラリー「THE WALL」、7階ギャラリー「THE TOP」
住所:山形県山形市上桜田3-4-5号
開館時間:10:00~17:00
休館日:月~水(木~日のみ開館。ただし9月19日は開館)
料金:無料
同館史上最大規模の展覧会。「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」(ポーラ美術館)
モネやルノワールら19世紀の印象派の画家たちの作品から、ゲルハルト・リヒターや杉本博司ら現代美術の巨匠たちの作品までの名作が集結する展覧会「モネからリヒターへ
― 新収蔵作品を中心に」は9月6日まで。
開館以来、ポーラ創業家二代目の鈴木常司が戦後約40年をかけて収集したコレクションを公開し、これを基盤として様々な企画展を開催してきたポーラ美術館。近年では従来のコレクションに加えて、20世紀から現代までの美術の展開を跡づけるために重要な作品の収集を行っている。
本展は、鈴木常司が収集した19~20世紀の近代絵画が中心となるコレクションと、近年新収蔵した作品をあわせて紹介する初の機会。「光」を主要なテーマに、移ろう光を絵画に描き留めようとしたモネなど印象派の画家たちの作品から、光に強い関心を持つリヒターや杉本博司、ケリス・ウィン・エヴァンスなどの現代の作家たちの作品が一堂に紹介されている。
会期:2022年4月9日~9月6日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
電話番号:0460-84-2111
開館時間:9:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:会期中無休 ※最新情報は公式ウェブサイトにて確認
料金:一般 1800円 / 大学・高校生 1300円 / 中学生以下無料
色彩の探求を振り返る。「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」(DIC川村記念美術館)
1950年代後半から60年代にかけてアメリカを中心に発展した抽象絵画の動向のひとつである「カラーフィールド」。その関連作家9名の作品を通してこのムーブメントを紹介する日本初の展覧会「カラーフィールド
色の海を泳ぐ」が9月4日まで開催されている。
第1章「色の形」では、フランク・ステラ、ケネス・ノーランド、ジャック・ブッシュ、アンソニー・カロを紹介。第2章「色と技法」では、カラーフィールドの「技法」に着目し、ヘレン・フランケンサーラー、フリーデル・ズーバス、ラリー・プーンズといった作家を展示する。
第3章「色から光へ」はジュールズ・オリツキーの作品のみで構成。オリツキーは、ステイニングに始まり、絵筆やスポンジ、スプレーガンなど様々な技法や道具を駆使し、生涯にわたり絵画における色彩と光の効果を探求しているアーティストだ。
会期:2022年3月19日~9月4日
会場:DIC川村記念美術館
住所:千葉県佐倉市坂戸631
電話番号:050-5541-8600
開館時間:09:30~17:00(入館は16:30まで) ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:月
料金:一般 1500円 / 65歳以上・学生 1300円 / 小中高生 600円 ※事前予約制
美術館という制度を問う。鴻池朋子「みる誕生」(高松市美術館)
絵画や彫刻、手芸、歌、映像、インスタレーションなど様々な表現手法を通し、芸術の根源的な問い直しを続けているアーティスト・鴻池朋子。その個展「みる誕生」が、9月4日に閉幕する。
鴻池は1960年秋田県生まれ。大学を卒業後、玩具、雑貨の企画デザインに携わり、98年よりアーティスト活動を開始。近年は2015年の「根源的暴力」(神奈川県民ホールギャラリー)をはじめ、「ハンターギャザラー」(秋田県立近代美術館、2018)、「鴻池朋子
ちゅうがえり」(アーティゾン美術館、2020)など、ほぼ毎年大規模な個展を立て続けに開催しており、いずれも大きなインパクトを人々に与えてきた。
本展タイトルにある「みる誕生」とは、「生まれたての体で世界と出会う驚き」を表す言葉だ。同館のコレクションと「糞」の関係や金陽会の展示、あるいは会場に張り巡らされた紐など、多様な要素から感じ取れるのは、鴻池が既存の「美術館」というシステムに限界を感じ、その存在そのものを問い直そうとしているということだ。そしてその問いかけは、様々な「みる」を通じて来館者一人ひとりが受け取っていくことになる。
会期:2022年7月16日~9月4日
会場:高松市美術館
住所:香川県高松市紺屋町10-4
電話番号:0087-823-1711
開館時間:9:30~17:00(金土~19:00) ※入室は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下無料 ※8月6日は「美術館の日」で観覧無料
運慶800年遠忌を記念。「運慶 鎌倉幕府と三浦一族」(横須賀美術館)
横須賀美術館では「運慶
鎌倉幕府と三浦一族」展を9月4日まで開催している。本展は、1223(貞応2)年に没した運慶の800年遠忌を記念した、横須賀美術館と神奈川県立金沢文庫の共同開催展。
奈良・興福寺や、東大寺での造仏が広く知られる仏師・運慶は、鎌倉幕府という新政権と密接に結びつき、北条氏からの信頼を背景に東国での活躍の場を得ていた。鎌倉幕府初代侍所別当に任命された武将・和田義盛の発願による浄楽寺の諸像(1189)をはじめ、三浦一族の造仏にも関与していた。
本展では、運慶および運慶工房が手がけたと見られる仏像を中心に、前後する時代の仏像や書跡など約50点の文化財が揃う。なかでも見どころは、浄楽寺に安置されている運慶の数ない真作のうちの2駆、《毘沙門天立像(びしゃもんてんりゅうぞう)》と《不動明王立像(ふどうみょうおうりゅうぞう)》の展示となっている。
会期:2022年7月6日~9月4日
会場:横須賀美術館
住所:神奈川県横須賀市鴨居4-1
電話:046-845-1211
開館時間:10:00~18:00 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
料金:一般 1000円 / 65歳以上・大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
空間の操作の行き着く先とは。大岩雄典「渦中のP」(space[十和田市現代美術館サテライト会場])
2022年7月より始動した「space(十和田市現代美術館サテライト会場)」。その初回の展覧会として、大岩雄典の個展「渦中のP」が9月4日まで開催されている。
大岩は1993年埼玉県生まれ。現在、東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程に在籍。物語論・言語哲学、フィクション研究、ゲームスタディーズなどの自身の関心領域にとどまらず、戯曲、話芸、漫才、ホラーといった様々な言葉の様式を独自の視点から空間に組み込む(インストール)ことで、固有の時間感覚を持つ「空間芸術」として提示している。
大岩は、美術館での初の作品発表となる今回のために、展示会場であり、目[mé]の作品でもある《space》と、その周辺の十和田市街の空間が持つ性質を注意深く観察し、これまでの自身の関心であった、ドラマ(劇)、鑑賞者の行為や動線、展覧会の制度との、一種の「地口」を見出した。
会期:2022年7月1日~9月4日
会場:space(十和田市現代美術館サテライト会場)
住所:青森県十和田市西三番町18-20
電話:0176-20-1127(十和田市現代美術館)
開館時間:10:00~17:00
休館日:月
料金:無料
※最新情報は十和田市現代美術館のウェブサイトへ
芸術の社会的機能とは何か。「ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ:どこにもない場所のこと」(金沢21世紀美術館)
韓国のアーティスト・デュオ、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホによる、日本では初となる大規模個展「どこにもない場所のこと」が9月4日まで開催されている。
ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホは2009年に結成。当初より「現代世界における芸術の社会的機能と役割は何か」を問いかけるプロジェクト「News
from Nowhere」を軸に作品を展開し、様々な領域の専門家との対話と協働のための実践的なプラットフォームを提唱してきた。
本展は、未来の人類が生存と自由の獲得のために葛藤する姿を詩的に描いた新作映像インスタレーション、2021年に韓国国立近現代美術館で発表された《News
from Nowhere : Freedom
Village》、そしてアポカリプス前後の異なる時間軸とその接続を精緻に描き出した代表作《世界の終わり》の3作品を軸に構成される。いずれもドキュメンタリーとフィクションの間を往還しながら、社会システムの矛盾や国家・世界のあり様を問いかけるこれらの作品を通して、各々に通底する歴史横断的な視点から世界の「いま」を読み解く。
会期:2022年5月3日~9月4日
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
電話:076-220-2800
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00)※観覧券販売は閉場30分前まで。最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:月
料金:一般 1200円 / 65歳以上 1000円 / 大学生 800円 / 小中高生 400円
いくつものモダンのかたちを紹介。「機能と装飾のポリフォニー 交歓するモダン」(豊田市美術館)
豊田市美術館では9月4日まで、展覧会「機能と装飾のポリフォニー 交歓するモダン」を開催している。
1910年代から30年代は、西欧を中心に世界で様々な「モダン」のかたちが現われた時代。機能主義に基づく「モダニズム」は、いまだに当時の中心的な動向とみなされているいっぽうで、大衆消費社会が進展したこの時代は、つねに新しくあるために装飾することに価値が置かれた、儚き「モダニティ」の時代でもあった。本展は、包括して紹介されてこなかったモダンデザインと装飾芸術、ファッションを一堂に集め、その関わりに焦点を当てるもの。1914年に第一次世界大戦が勃発したのち、急速に変化する社会のなかで、作家たちがときに交わり、ポリフォニーのように共鳴しながら探求したいくつもの「モダン」のかたちを紹介する。
また、フェリーチェ・リックス(上野リチ)らウィーン工房や、バウハウスで活躍した女性作家たちの作品にも注目。そして、バウハウスやデ・ステイルだけでなく、バウハウスと同時期にドイツで応用芸術教育を実践したブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校や、フランスでモダンデザインを推し進めるために、ロベール・マレ=ステヴァンらが中心となった現代芸術家協会UAMなどの動向も取り上げられている。
会期:2022年6月7日~9月4日
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話:0565-34-6610
開館時間:10:00~17:30(入館は17:00まで)
休館日:月
観覧料 一般 1400円 / 大学・高校生 900円 / 中学生以下無料
作品にお手を触れるようお願いします。「これってさわれるのかなー彫刻に触れる展覧会ー」(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)
展覧会では「作品にお手を触れないようお願いします」という注意書きをよく目にする。こうした「普通」に対して「さわってみたいと思うことはありませんか?」と問いかける展覧会「これってさわれるのかなー彫刻に触れる展覧会ー」が、9月4日まで神奈川県立近代美術館
鎌倉別館で開催されている。
本展では、《考える人》でお馴染みの彫刻家、オーギュスト・ロダンの《花子のマスク》、箱根彫刻の森美術館常設展時作品《両腕》を制作したケネス・アーミテージの《訪問者たち》
のほか、柳原義達、流政之、浜田知明、湯原和夫ら日本の現代彫刻を牽引してきた作家の作品など、同館が所蔵する彫刻作品24点が展示される。2階ギャラリーではさらに、「素手で触れる」かたちで彫刻家・北川太郎の作品も特別出品されている。
作品が持つ造形の趣を目で見るだけではなく、手を通して感じることができる本展。作品保護と感染症対策のため、来館者は展示室入り口にて手袋を着用することになっているが、用意される手袋は学芸員や美術品輸送の専門業者が作品に触れるときと同じニトリル手袋というこだわりにも注目だ。
会期:2022年6月11日~9月4日
会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目8-1
電話番号:0467-22-5000
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般250円 / 20歳未満・学生150円 / 65歳以上・高校生100円 / 中学生以下無料
光に溢れた最新作も。蜷川実花「瞬く光の庭」(東京都庭園美術館)
写真家、映画監督・蜷川実花の展覧会「瞬く光の庭」は、東京都庭園美術館で9月4日まで。
写真家として、木村伊兵衛写真賞をはじめとする数々の賞を受賞している蜷川。映像作品も多く手がけており、最新監督作『ホリック
xxxHOLiC』が今年4月に公開されたほか、Netflixオリジナルドラマ『FOLLOWERS』が世界190ヶ国で配信中だ。
本展は東京都庭園美術館を会場に、蜷川がコロナ禍の国内各地で昨年から今年にかけて撮影した、最新の植物の写真と映像作品を展覧する。また、蜷川がいま強く惹かれているという、光に満ちあふれた「光彩色(こうさいしょく)」で彩られた最新作と、重要文化財に指定されている旧朝香宮邸とのコラボレーションも見どころ。ダイナミックな映像インスタレーションも展開され、作家にとっての新境地が示される。
会期:2022年6月25日~9月4日
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)※最新情報は展覧会サイトにて要確認
休館日:月
料金:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)1120円 / 65歳以上・中高生 700円 ※オンラインによる日時指定制。 詳細は展覧会サイトへ