「今生きている人のリアル書く」 史上2人目、2度目の本屋大賞を射止めた作家の凪良ゆうさん
12日に発表された、全国の書店員の投票で決まる本屋大賞は今年が20回目。史上2人目となる2度の大賞受賞者となった凪良(なぎら)ゆうさん(50)は節目での快挙を喜ぶ。3年前の受賞時は新型コロナウイルス禍を受け、無観客で行われた。それだけに「書店員さんにようやく直接お礼が言える」と感慨もひとしおだ。
受賞作「汝(なんじ)、星のごとく」(講談社)は、瀬戸内海の島で出会った男女の約15年間を描く。希薄な家族関係の中で、生きづらさを抱える2人が互いにひかれ合い、ときにすれ違い、悩みながらも成長する姿を追う。自身も小学生のころ、親と離れて暮らし家族の絆を十分感じられなかった。そのつらい体験も受賞作の底に流れる。
「外側からは平凡に見える人生でも、一人ひとりにとっては絶対に平凡ではない。その人にしか分からない喜怒哀楽があり、その人なりの人生がある。今生きている人のリアルを書いた自負のようなものはある」
男性同士の恋愛を題材にしたボーイズラブ(BL)小説界で10年ほど活躍するなど筆歴は長い。令和2年の本屋大賞に輝いた「流浪の月」(東京創元社)をはじめ、近年は一般文芸作品でもヒットを連発する。
「小説を書くことは自分の中にたまった澱(よど)みのようなものを、扱いやすいものにすること。そのままだと重苦しいものでも、小説という形にしてしまえば幾分軽く持ち運べるんです」(海老沢類)