アンリ・マティスの大規模回顧展、来春から〈東京都美術館〉でスタート。
大胆な色使いと独創的なデッサン力で知られ、「色彩の魔術師」と呼ばれたアンリ・マティス。フランス象徴主義の大家ギュスターブ・モローに師事した若き日は写実的な画風だったが、ゴッホやセザンヌ、スーラ、ゴーギャンら後期印象派の影響を受けながら自身のスタイルを模索し、斬新な色彩表現を見出した。
フォービスム(野獣派)として注目されたムーブメントを牽引した芸術家のひとりであり、豊かな色彩と単純化された線で自身の感情を表現する作品を発表。パブロ・ピカソやマルセル・デュシャンと並んで20世紀初頭の視覚芸術に革命を起こした彼は前衛美術を切り開いた存在であり、多くの芸術家に影響を与えたのは誰もが知るところ。
マティスは1920年代には古典絵画に回帰したが、色彩の解放と形の探求を続け、グラフィックデザインや教会の内装を手掛けるなど活躍の場を拡大。純粋に色彩と向き合う表現方法として切り絵に開眼。オーガニックな形や幾何学的な形をダイナミックな構図にまとめた手法は新たな芸術へと発展し、大病で体が不自由になった70代で切り絵に専念した。
本展ではチャレンジ精神あふれる色彩に目を奪われるフォービズム時代の絵画に加えて彫刻や素描、版画や切り紙絵、そして晩年の最高傑作と言われる南仏ヴァンスの〈ドミニコ会修道会ロザリオ礼拝堂〉に関する資料など60数年にわたるマティス芸術を多角的に紹介。84歳で他界するまで芸術家としての進化をやめなかったマティスの軌跡を辿り、当時も今も多くの人々を魅了する芸術家の本質を見極める良い機会となるはずだ。
〈東京都美術館〉企画展示室。スケジュールなど詳細は公式サイトにて順次公開予定。