『ガロ』でも活躍したイラストレーター・安西水丸の作品群が武蔵野美術大学へ寄贈
安西水丸は東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科造形コースを卒業後、電通やADAC(ニューヨーク)で経験を積む。1971年、平凡社でアートディレクターを務める傍ら『ガロ』誌で漫画を発表。その後、1981年からはフリーのイラストレーターとして広告、雑誌の表紙や挿絵、書籍の装丁を手がけ、漫画をはじめ自著も多く執筆した。その仕事では、朝日広告賞や毎日広告賞を受賞している。
今回の寄贈は、武蔵野美術大学美術館で2020年9月に開催された展覧会「イラストレーションがあれば、
」に際して安西水丸事務所から原画作品を借用したことに始まる。そこで、遺族から「美術大学という後世のために作品を活用できる場所に寄贈したい」という申し入れがあり、昨年9月に寄贈契約をが締結されたという。
寄贈先である武蔵野美術大学美術館は、1967年の開館以来、約3万点のポスターや400脚以上の近代椅子を中心に、4万点を超えるデザイン資料や美術作品を収集・所蔵。年間を通じて8本程度の企画展を開催しており、民俗資料約9万点を所蔵する民俗資料室も設置している。
同じく寄贈先の同大学図書館は、美術、デザインの専門書を中心に30万冊以上の図書や学術雑誌・専門誌約5000タイトルを所蔵。主なコレクションとして、杉浦康平デザインアーカイブ、大辻清司フォトアーカイブや芦原義信建築アーカイブなどの保存・管理を行っている。
安西が第一線で活躍した1970年代~2010年代は、イラストレーターやデザイナーが数多く登場し雑誌などを通してその表現が普及していった、日本のグラフィック・デザイン史にとって重要な時期。そんな時代に広告から装丁まで幅広く手がけた安西の作品群は、イラストレーションに関心を持つ学生が多い同大学にとって、貴重な研究・教育資源となりうるだろう。
今回の寄贈作品については、同館にて調査・整理ののちに、作品の貸出・公開へ向けた準備が進められる予定。また、その全貌を紹介する展覧会の開催や、広く公開するためのデータベース化も計画されているという。教育研究機関としてどのように貴重な資料を活用するのか。今後の動向に注目したい。