古代メキシコ、ガウディ、アニメ背景に絵金まで。今週末に見たい展覧会ベスト12
東京・上野の東京国立博物館
で、古代メキシコの文明が残した品々を一堂に展示する特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」が開幕した。会期は9月3日まで。レポート記事はこちら。
展覧会は「古代メキシコへのいざない」「テオティワカン 神々の都」「マヤ 都市国家の興亡」「アステカ
テノチティトランの大神殿」の4章構成。前1500年頃に興ったオルメカ文明、紀元前2世紀から6世紀まで栄えた古代計画都市・テオティワカン、多くの王朝や都市が並立したマヤ文明、13世紀に成立したアステカ文明などの遺産が一堂に介する。
とくにテオティワカンの「太陽のピラミッド」の内部や周囲から発掘された品々は注目だ。頭蓋骨を表現した造形が印象的な、展示室の中央に鎮座する《死のディスク石彫》(300~550)。地平線に沈んだ(死んだ)夜の太陽を表していると解釈されており、古代メキシコの人々が持っていた死生観や宗教観を象徴的に伝えている。
会期:2023年6月16日~9月3日
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日、8月14日は開館)、7月18日
料金:一般 2200円 / 大学生 1400円 / 高校生 1000円 / 中学生以下 無料
未完の聖堂に込められた意味。「ガウディとサグラダ・ファミリア展」(東京国立近代美術館)
スペイン・カタルーニャ地方出身で、バルセロナ市内にカサ・ビセンスやグエル公園、カサ・バッリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア聖堂など、世界遺産に登録された建築群を残した建築家、
アントニ・ガウディ(1852~1926)。そんなガウディの建築思想と造形原理を読み解く展覧会「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が東京国立近代美術館
でスタート。レポート記事はこちら。
ガウディの仕事を紹介する展覧会はこれまで様々なかたちで開催されてきたが、本展は、「未完の聖堂」と称されながらもいよいよ完成の時期が視野に収まりつつあるサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞ったもの。
展覧会は、「ガウディとその時代」「ガウディの創造の源泉」「サグラダ・ファミリア聖堂の軌跡」「ガウディの遺伝子」の4章構成。ガウディの独創性の水脈がいかにサグラダ・ファミリア聖堂へとつながり、ガウディの没後、その意志を受け継ぎながら、様々な人々の創造性や創意工夫によって続いているかを考察するものとなっている。
会期:2023年6月13日~9月10日
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 2200円 / 大学生 1200円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料
着飾るサムライたち。特別展「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」(静嘉堂文庫美術館)
静嘉堂文庫美術館
のコレクションには、武家文化の日常生活の中ではぐくまれたサムライの装身具である刀装具、提げ物の印籠根付の優品が豊富だ。こうした近世の美術工芸品は、海外では浮世絵と同じく日本を代表する美術品として高く評価され、明治期以降、世界中の愛好家に愛玩、蒐集されてきた。
静嘉堂文庫美術館の特別展「サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―」は、こうした「サムライのおしゃれ」を展観するとともに、江戸時代の人々の様子を活き活きと描いた近世初期風俗画なども併せて紹介。
さらに静嘉堂で発見された、岩﨑彌之助の義父・後藤象二郎が1868年に英国ヴィクトリア女王から拝領したサーベルも初公開する。
会期:2023年6月17日~7月30日
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金~18:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日は開館)、7月18日
料金 : 一般1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料
エマイユ(釉薬)と身体の関わり。「エマイユと身体」(銀座メゾンエルメス フォーラム)
エルメス財団が、自然素材をめぐる職人技術や手わざの再考、継承、拡張を試みる「スキル・アカデミー」の一環として、書籍『Savoir & Faire
土』(岩波書店)を出版。書籍の刊行を記念し、銀座メゾンエルメス フォーラムでは、関連する陶芸作品を集めたグループ展「エマイユと身体」が開催される。
本展では、陶芸に用いられ、火と空気によってガラス質へと変容するエマイユ(釉薬)に注目しながら、粘土と身体の関係を考察する。参加アーティストはシルヴィ・オーヴレ、ジャン・ジレル、内藤アガーテ、ユースケ・オフハウズ、小川待子、フランソワーズ・ペトロヴィッチ、安永正臣。
作家はそれぞれ、エマイユがもたらす色彩や効果を用いながら、身体を見つめて作品を制作。エマイユに刺激された作家たちがつくり出す、独特の世界を体感できる展覧会となる。
会期:2023年6月17日~9月17日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8、9階
住所:中央区銀座5-4-1
電話番号:03-3569-3300
開館時間:11:00~19:00
休館日:不定休料金:無料
アニメ背景はいかに設計されたか。「アニメ背景美術に描かれた都市」(谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館)
石川・金沢市の谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館で、アニメーションのために描かれた背景美術とその制作に迫る展覧会「アニメ背景美術に描かれた都市」が開催される。
実写と異なりすべてをいちからつくり上げるアニメーションは、背景の都市や建築、室内のディテールに至るまで意図的に描かれ、独自の世界観を構築している。
本展では、1980年代末から2000年代初頭にかけて制作された日本を代表するSFアニメーション作品について、卓越した技術によって緻密に描き込まれた手書きの背景美術の展示とともに、それらを創り上げるために参照された書籍やロケハン写真などのレファレンス資料やクリエイターへのインタビュー、年表と併せて建築家による未来都市構想などを紹介する。
会期:2023年6月17日~11月19日
住所:石川県金沢市寺町5-1-18
休館日:月(祝日は開館)、7月18日、9月19日、10月10日、10月31日
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
25年の生涯で制作した珠玉の作品が一堂に。「中園孔二 ソウルメイト」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)
香川・丸亀市の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で、中園孔二(1989~2015)の個展「中園孔二 ソウルメイト」が開催される。会期は6月17日~9月18日。
中園は1989年神奈川県横浜市生まれ。2012年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業後、関東を拠点に制作活動を実施。2014年末には香川県の土地柄に惹かれて移住したが、2015年に瀬戸内海沖にて消息不明となり、25歳の若さで他界した。
絵画を中⼼に彫刻、インスタレーションなど数多くの作品を生涯で制作。クレヨンや油絵具といった様々な画材を使用したほか、指で描く、チューブから直接キャンバスに絵具をつけるといった手法で、複数のレイヤーを画面につくり出した中園。その最期の地である香川を舞台に、過去最大規模の個展として約200点の作品を一堂に紹介される。
会期:2023年6月17日~9月18日
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
住所:香川県丸亀市浜町80-1
電話番号:0877-24-7755
開館時間:10:00-18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日、9月18日は開館)、7月18日
料金:一般 950円 / 大学生 650円 / 高校生以下 無料
現代社会の矛盾とおかしみ。ヌケメ「We’ll be ruined !」(LEESAYA)
LEESAYAでヌケメの個展「We’ll be ruined !」が開催される。会期は6月17日から7月9日まで。
ヌケメは1986年岡山県生まれ。ファッションに携わった経験から、パーカーやTシャツを支持体に、企業ロゴや絵文字などを組み合わせて「グリッチ(Glitch)刺繍」を施した作品群を展開。グリッチは「データや機器」の「破損や破損しているが再生可能なデータ」を意味する。グリッチ刺繍は、コンピューターミシン用の刺繍データのバイナリ(2進数化された情報)を書き換え、針の動きに直接グリッチを起こすことで生みだされ、鑑賞者の認識にバグを起こしてきた。
本展タイトル「We’ll be ruined
!(全部ダメになっちゃうよ!)」はとある映画のセリフの一節。頼みの綱である助っ人をコントロールできず、悪化する事態に直面している登場人物の悲痛な叫びは、人々の生活を豊かにしてきたテクノロジーやグローバルエコノミーを制御しきれない現代社会のようだという。本展に並ぶ新作群からは、人間が技術や経済の奴隷となり身動きがとれずにいる現況に対する、矛盾やおかしみを感じることができるだろう。
会期:2023年6月17日~7月9日
会場:LEESAYA
住所:東京都目黒区下目黒3–14–2
電話番号:03-6881-4389
開館時間:12:00~19:00(日~17:00)
休館日:月火祝
料金:無料
作家初の美術館個展。「今井俊介 スカートと風景」(東京オペラシティ アートギャラリー)
昨年7月から11月にかけ、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された今井俊介の美術館初個展「スカートと風景」が、6月18日まで初台の東京オペラシティ
アートギャラリーで巡回開催中だ。展覧会レポートはこちら。インタビューはこちら。
本展では、丸亀で開催された個展を東京オペラシティ
アートギャラリーの会場にあわせて再構成。ストライプの絵画に至る過程ともいえる7つの初期作品を新たに加え、2023年の新作までが並ぶ。展覧会全体がつながり、今井の色彩の世界に入り込むような体験ができる絶好の機会だ。
会期:2023年4月15日~6月18日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00 ※入場は18:30まで
休館日:月
料金:一般 1400円 / 大・高生 800円 / 中学生以下無料
半世紀ぶりの高知県外の展覧会。「幕末土佐の天才絵師 絵金」(あべのハルカス美術館)
幕末から明治にかけての土佐で活躍した絵師・金蔵(1812~1876)。祭りの場で楽しまれた芝居屛風や絵馬提灯などを手がけ、いまも高知では「絵金(えきん)さん」の愛称で親しまれている。レポート記事は
こちら。
大阪・あべのハルカス美術館で6月18日まで開催されている「幕末土佐の天才絵師 絵金」は、高知県外ではじつに半世紀ぶりとなる金蔵の展覧会。
展覧会は「絵金の芝居絵屛風」「高知の夏祭り」「絵金と周辺の絵師たち」の3章構成。本展では「ロウソクの灯りで屛風を照らす」「絵馬舞台に乗せる」といった、金蔵の作品が高知の祭りで実際に飾られてきた環境を再現している。
会期:2023年4月22日~6月18日
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス 16階
電話番号:06-4399-9050
開館時間:10:00~20:00(月土日祝~18:00)
料金:一般1600円 / 大学・高校生 1200円 / 小中学生 500円
リニューアルオープン記念展。特別展「Before/After」(広島市現代美術館)
1989年5月、日本初の公立現代美術館として開館した広島市現代美術館。同館が、開館以来初となる大規模改修工事を終えて開催している特別展「Before/After」は6月18日まで。展覧会レポートは
こちら。
本展は美術館の改修工事によって生じた様々な変化を足がかりにしたリニューアルオープン記念展となっており、様々なキーワードを館内に散らばらせ、様々な「前」と「後」の現象や状況に着目したものだ。
美術館開設準備室時代の古い看板や改修工事で使用された図面や記録写真、LED化のため役目を終えた照明器具や古いエレベーターの部品、サイン、取り替えとなった大理石の欠片など、工事現場から救いあげられたものの数々を展示することも特徴。もちろん、45組による約100点もの収蔵作品の展示も見どころとなっている。
会期:2023年3月18日~6月18日
会場:広島市現代美術館
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
電話番号:082-264-1121
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生・65歳以上 800円 / 中学生以下無料
布と染色をめぐる旅。「発現する布 オセアニアの造形と福本繁樹/福本潮子」(青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC])
南太平洋メラネシアで育まれた手仕事の布と、「染め」だからこそ可能な表現を追求してきた福本繁樹、福本潮子の作品群を交感させる青森公立大学
国際芸術センター青森(ACAC)の展覧会「発現する布 オセアニアの造形と福本繁樹/福本潮子」は6月18日まで。
福本繁樹は京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で西洋画を学び、89年までは家業の和装染色業に従事していた。京都市立美術大学ニューギニア調査隊に参加するなど、69~90年にかけて南太平洋の美術を探査。80年代後半からは国際展に参加するなど、作品発表を本格化させてきた。福本潮子は福本繁樹と同様に京都市立美術大学で西洋画を学び、ニューギニア調査隊に参加。二代目龍村平蔵のもとで京都の染織文化を学び、日本の伝統と独自の技法を組み合わせた藍染め作品を80年代より国際展で発表してきた。
本展はふたりの創作の原点ともいえるオセアニアの布を展示することで、布文化の持つ多層性や根源的な迫力を提示。さらにふたりの作品がそのルーツをたどるように展示されている。
会期:2023年4月15日~6月18日
会場:青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)
住所:青森市大字合子沢字山崎152-6
電話番号:017-764-5200
開館時間: 10:00~18:00
休館日:会期中無休
料金:無料
嶋田美子 展「おまえが決めるな!」(オオタファインアーツ)
オオタファインアーツの嶋田美子の21年ぶりとなる新作個展「おまえが決めるな!」は6月17日まで。嶋田と笠原美智子(アーティゾン美術館副館長)の対談はこちら。
嶋田美子は、1980年代後半から女性と戦争をテーマに制作し、長らく日本のフェミニズムアートの急先鋒を担ってきたアーティスト。近年では、松澤宥や美学校など1960年代の日本における前衛芸術の研究者としても知られている。
今回の展示では、1972年に設立された「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」に着目。♀印のついたピンク色のヘルメットを用いた同活動は、今日まで評価されることが少なかったが、嶋田は性と生殖に関する女性の「自己決定権」を明確にした意義があると主張する。会場では、半世紀も前にそのことにはっきりと異を唱えた中ピ連のスピリットを復活させることを試み、その決意表明を具現化した写真作品、ペインティング、映像作品が展示されている。
会期:2023年4月15日~6月17日
会場:オオタファインアーツ
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3階
電話:03-6447-1123
開館時間:11:00~19:00
休館日:日月祝
観覧料:入場無料