日本がルーツのアーティストによる二人展「訪問者」 @銀座メゾンエルメス
1977年千葉県生まれ、イギリス・ロンドン在住のクリスチャン・ヒダカと、74年アメリカ・シカゴ生まれ、ロサンゼルス在住のタケシ・ムラタ。日本の血を引き、英語・米語圏で育った二人のアーティストによる本展「訪問者」は、コンテンポラリーアートにおける虚構を、二つの物語から浮かび上がらせる試み。
ヒダカの制作する絵画は、劇場とその建築、西洋の絵画史を参照している点に特徴があり、近年はだまし絵のような入れ子構造の中に、古今東西のさまざまな要素が共存する奇妙な宇宙を描き出している。
本展では、パブロ・ピカソの初期作品『アルルカン』、画家フラ・アンジェリコの作品のディテール、建築家カルロ・スカルパの作品を成す一要素「フレーム」などが反復する、ハイブリッドな魅力あふれる作品を展示する。
一方ムラタは、主にデジタルメディアを用いた映像作品や立体作品などで独自のリアリズムを追求している。Web3.0やNFTによるメタ世界への興味から、バスケットボールをする犬「ラリー」の映像作品などを制作。液体シミュレーターでレンダリングされたラリーは、メタ世界にしか存在しないムラタの自画像でもあるのだという。
観る者がアートの中に求めるリアリティや虚構性を巧みに用いて、現実とは異なる次元に誘う二人の表現世界。「訪問者」の正体を、会場で確かめてみてはいかが。
Text : Manami Abe