国立科学博物館がクラウドファンディングを開始。標本資料の収集保管活動の継続のため
国立科学博物館は1877年に教育博物館として創立。1914年に東京教育博物館、21年に東京博物館、31年に東京科学博物館となり、49年に現在の館名となった。2001年には独立行政法人化された。
現在の国立科学博物館の登録標本・資料数は500万点以上にのぼり、その数は年間数万点ずつ増加。茨城・筑波地区にある収蔵庫のキャパシティは限界に達しており、受け入れた標本・資料も人手不足で整理できずに廊下に山積みにされているものもある。コロナ禍による入館料収入の減少や、燃料価格の高騰による光熱費関連の支出の増加が、こうした状況に追い打ちをかけた。研究費の削減やスタッフのコスト削減などで現在は黒字を維持しているが、このままだと赤字になる可能性もあるという。
「調査・研究」「展示・学習支援」「標本・資料の収集・保管・活用」の3つをミッションとして掲げている同館だが、現在、その根幹である「標本・資料の収集・保管」が資金的に危機を迎えている。
同館館長の篠田謙一は、今回のクラウドファンディングを始めるにあたり、その思いを次のように語った。
「コロナ禍が入館料収入での館の維持の限界を明らかにした。欧米の館が資産家からのドネーションなども含めて成り立っていることも鑑み、ほかの努力も並行させることは前提として、クラウドファンディングの実施に踏み切った。金銭的な支援にとどまらず、当館の活動を広く知ってもらい、支援者とつながっていくような取り組みにしていきたい」。
クラウドファンディングは5000円から法人向けの1000万円までの各コースが設定されている。リターンは同館のスタッフから募集し、厳選したものを用意。同館コレクションを厳選して収録した『かはくオリジナル図鑑』、同館研究者が研究の過程で描いたスケッチをデザインしたトートバッグ、収蔵庫のプレミアムツアー、所蔵資料から3Dプリンタで制作した精巧なレプリカ、館が推奨する昆虫標本作成セットなどがラインナップされる。
なお、これまで、同館は3回クラウドファンディングを実施。16、18年の「3万年前の航海
徹底再現プロジェクト」では総額5978万円、2020年の「YS-11量産初号機公開プロジェクト」では総額2793万円の支援を集めた。
また、クラウドファンディング実施中はオンライン配信での取り組みも実施。8月10日19時からは副館長兼コレクションディレクターの真鍋真と他研究員がコレクションの魅力を語るトークライブを、また毎週木曜日の19時からは研究員をゲストに招いてコレクションへの偏愛を語る配信ライブを実施する。