葛飾北斎の名品が〈サントリー美術館〉と〈九州国立博物館〉に揃い踏み!
長年にわたって絵師の頂点に君臨した北斎が一見ポップとも思える独特な画風を確立していく過程や表現スタイルの変貌、そして絵師として目指した高みや思想、宗教観にも迫る。奥行きの深い作品群から見えてくるのは、老いてなお旺盛な創作意欲と飽くなきチャレンジ魂だ。
特に85歳ごろに描き始めたとされる「弘法大師修法図」(5月18日から6月12日展示予定)は、画狂老人卍と号していた晩年の最高傑作。西新井大師總持寺が所蔵する本作は年に一度の「北斎会」にのみ一般公開される掛け軸なので、この機会にぜひとも見たいもの。
一方、〈九州国立博物館〉の『特別展「北斎」』は、2017年に同博物館に寄贈された重要文化財《日新除魔図(宮本家本)》全219枚を本邦初公開。これは数え年83歳から84歳にかけて北斎が毎朝の日課として描き続けた獅子図や獅子舞図で、魔除けや長寿・息災を願って描いたとされている。躍動感あふれる獅子それぞれの姿態や表情は北斎の想像力の豊かさを物語っているし、短文が記された図からは描いた日の彼の気分も伝わってくる。
また天保15年、85歳の北斎が小布施逗留中に描いたと言われる東町祭屋台の天井図「龍図」「鳳凰図」が九州初上陸。他にも北斎に影響されたエミール・ガレやルイス・カムフォート・ティファニーの作品も展示される。
代表作から晩年の傑作まで北斎の魅力を満喫できる、興奮必至の両展覧会。会期中、作品の展示替えもあるので、何度でも足を運んでしまいそうだ。