連載開始50年「ベルサイユのばら」展 原画絵巻に宝塚衣装、パフェにもオスカル様
■〝宮殿〟でオスカル様やバラに囲まれる
普段は近づかない六本木だが、「ベルばら」展にはファンとして、行かねばならない。鑑賞には事前予約(日時指定)が必要で、入場料も2200円(一般)となかなかのハードルではあるが、六本木ヒルズ森タワー52階にある「東京シティビュー」(東京都港区)までたどり着く。11月20日までの会期中(無休)、午後10時まで開場しており、平日夜が狙い目だそうだ。
まずエントランスで、革命に散った仏王妃マリー・アントワネットとオスカルが描かれた巨大タペストリーに出迎えられ、一気に作品世界へワープ。その奥の〝ベルサイユ宮殿〟では、バラに囲まれたキャラクターとの撮影コーナーが待っている。
近くにスタッフが待機しており、記者のような一人客でも、スマートフォンを渡すと撮影してくれる。その掛け声も「アンドゥトロワ、トレビアン(仏語で、123、素晴らしい)」と、ここはもはや〝フランス〟である。
■池田理代子さんの原画絵巻に圧倒される
展示は4部構成で、原作漫画、宝塚歌劇、TVアニメ、派生作品群がメイン。1972年の連載開始から、少女漫画の歴史を変える2000万部超の大ヒットとなり、元祖メディアミックスといえる多様な展開を果たした作品の歴史を、目の当たりにできる。
最大の見どころは連載開始当時、わずか24歳だった池田理代子さんの原画群。全2000㌻にも及ぶ原作から、特にアントワネットとオスカルの2人に焦点を当てた、連載原画約180点を展示。オスカルを描く迷いのない線と、勢いのある力強いタッチは、いまなおパワーを放つ。ファンなら何度も読み込んだ、「あのページ」の原画に再会し、改めて物語をたどれる絵巻物のような構成だ。
所々に池田さんの創作へのエピソードパネルが挟みこまれ、またカラーページの彩色のグラデーションも楽しめる。個人的に目を奪われたのが、オスカルが生涯でただ一度、まとったドレスを再現したコーナー。原作通り清楚で、バラをかたどった刺繍(ししゅう)やビーズの装飾が豪華な白ドレス。一瞬、架空のオスカルが、実在していたかような錯覚を覚えた。
■宝塚歌劇の「オスカル様の居間」を訪問する
続いて宝塚歌劇のコーナーへ。連載終了後の1974年に初演され、少女漫画ファンだけでなく、大人の女性ファンの支持も得て、社会現象と言われた「ベルばら」ブームを起こした舞台である。今日まで再演を重ね、韓国や台湾公演も果たし、今や古典と化した宝塚の代表作。
壁いっぱいに展示された兵庫・宝塚大劇場のポスター群には、初代オスカルの榛名由梨に始まり、鳳蘭や麻実れい、真矢ミキ(当時みき)、天海祐希ら「ベルばら」に出演したスターが満載だ。
さらにオスカルとアンドレが愛を誓う名場面「今宵一夜」の舞台、オスカルの居間も再現されている。長谷川一夫演出の美しいポーズや、名曲「♪愛あればこそ」に思いをはせながら、撮影しよう。バラのシャンシャン(パレードで使う小道具)や、道具帳(舞台の装置図)、衣装デザイン画、美麗イラストが表紙の台本など、貴重な資料のオンパレードだ。
■充実のグッズを大人買い…オスカルパフェも
1979年にスタートしたTVアニメのコーナーでは、セル画や下絵が充実。派生作品群では、世界各国で翻訳、出版された「ベルばら」単行本や人形、日仏合作実写映画(1979年)資料が展示され、「ベルばら」の多様な展開を実感できる。そして今年、完全新作による劇場アニメ制作も決定。その背景画やキャラクター設定画も並び、作品がなお発展し続けていることが分かる。
主要4展示を経て、「ベルばら」愛が再燃したところで特設ショップに突入。オスカルのイラスト付き文房具や関連本、バラ型チョコレートなどを大人買いしたことは言うまでもない。
さらにその先に、期間限定の「ベルサイユのばらCAFE」があり、素通りすることはできなかった。何しろメニューは「オスカルパフェ」(1280円)や「マリー・アントワネット クグロフケーキ」(1450円)などである(10月23日まで)。テーブルも麗しいバラ柄で、オスカルパフェを注文。トリコロールカラーの赤白青のゼリーの上に、紅茶シフォンケーキとアイスクリーム、トップには赤いベルローズ(食用バラ)とオスカルのイラスト付きウエハースと「ベルばら」世界が凝縮した一品。憧れのオスカル様を食べるとは、とためらいを感じながらも完食した。
結局、会場に2時間以上滞在し、「ベルばら」の世界に浸った。ファン目線で楽しめる仕掛けが多い一方、作品の歩んだ半世紀と世相を重ねた年表や、宝塚の出演者一覧など、社会との関わりや積み重ねを感じる展示もあり、見ごたえは十分だ。
日時指定券に空きがある場合のみ、当日券販売。問い合わせは03・6406・6652(午前10時~午後8時)(飯塚友子)