モダニズムの建築家、進来廉の名作住宅がギャラリーに。
進来廉はル・コルビュジエのアトリエに学んだ最後の日本人建築家。さらにシャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェといった20世紀のパリで活躍した巨匠たちに師事したという経歴を持つ。代表作に神宮前の〈建築家会館〉があるが、千葉県野田市の〈M氏邸〉は、進来が1974年に手がけた個人住宅である。
「偶然出会った〈M氏邸〉から進来さんの経歴を紐解いていくことで、それまで知らなかったことが次々と出てきて、夢中になりました」というのは、この住宅をギャラリー兼スタジオに再生させたインテリアスタイリストの川合将人。
アート好きで海外生活を経験してきた若い夫婦のために建てられた住宅は、長年使われておらず、以前の借り手によりレストランにすべく大幅な改装が施されていた。当時の写真や資料を元に、できるだけオリジナルに戻すことからスタートしたという。改修を担当したのは建築家の磯﨑洋才だ。
「シンプルな空間構成ですが、ちょっとした段差を使ったプランニングや素材感が魅力的です。この時代にこうした和洋折衷の住宅が建てられて、大切に残されていることに驚きました」(磯﨑)
そして、この空間をより特別なものにしているのが家具である。建物に合わせて新たに選ばれたものばかりで、さらに、入口には進来がフランス時代の初期に師事したジョルジュ・キャンディリスの照明、勝手口には晩年に至るまで長年にわたり協働したペリアンの照明を配するなど、動線と進来の遍歴を重ね合わせる遊び心も。他では見られないアイテムも多く、ショールームとして販売も行う。
「進来さんの建築のように今まで注目されていなかったけれど、実は優れたデザインはたくさんあります。そんなデザイナーや日本に入っていない家具を紹介していく場所になれば」(川合)
モダニズムの雰囲気を色濃く残す住宅建築で、まだ見ぬデザインに触れたい。
予約制のギャラリーショールーム兼撮影スタジオ。企画展開催時は予約不要。7月15日よりフランスの家具デザイナー、ピエール・シャポの展示を開催。千葉県野田市野田57。