「あいち2025」、フール・アル・カシミ芸術監督が目指すものとは。「レガシーを受け継ぎ、新たな視点でチャレンジ」
カシミはアラブ首長国連邦をはじめ中東、そして世界中のアートをつなぐ支援者として、2009年にシャルジャ美術財団を設立。現在は理事長兼ディレクターを務める。アーティストとしてロンドンで芸術を学んだのち、第6回シャルジャ・ビエンナーレ(2003)の共同キュレーターとなった。その後、同ビエンナーレのディレクターを務め、2023年には第15回シャルジャ・ビエンナーレのキュレーターに就任。また、2017年には国際ビエンナーレ協会会長に選出されたほか、シャルジャのアフリカ・インスティテュート会長や建築トリエンナーレ会長兼ディレクターとしても活動。過去にはMoMA
PS1(ニューヨーク)やユーレンス現代美術センター(北京)などのボードメンバーも歴任していた。
会見ではまず、大林が48万人以上の来場者を記録した前回を振り返り、「現代美術のほかにも地場産業をはじめとした愛知の魅力を出すことができた」と評価。そのうえで、カシミの選任理由を次のように語った。「こうした『あいち2022』の成果をどのように継続、発展させていくのかを考えて芸術監督を選任した。『あいち2022』は成功を収めたいっぽうで、コロナ禍の開催とあって海外アーティストや海外からの来訪者が少なかったことは残念だった。コロナ禍が明けたいま、より海外とのつながりを念頭に置き、シャルジャ・ビエンナーレをはじめとする、国際的な芸術祭の経験とネットワークを活かし、国際芸術祭のプレゼンスを高めてもらえるものと期待して、カシミ氏を選任した。外からの視点だからこそ見える、愛知の素晴らしさを発信してほしい」。
カシミはロンドンでの学生時代に日本語を学んだ経験を持ち、会見も日本語で行われた。カシミは「あいち2025」に向けた抱負を次のように語った。
「これまで、シャルジャのみでなく、パキスタン、チュニジア、キューバなどで芸術祭に関わり、世界中のアーティストと交流してきた。こうした経験を活かして、世界中の素晴らしいアーティストを『あいち2025』でも紹介したいと考えている。また、地元のアーティストや学生、コミュニティとつながる機会を創出し、訪れる人に愛知の歴史や文化の魅力を深く知ってもらいたい。『あいちトリエンナーレ』時代を含めて、海外の芸術監督が就任するのは初めてと聞いている。これまでのレガシーを受け継ぎながら、自分らしい新たな視点でチャレンジできれば。芸術祭は21世紀の文化的な融合を見てもらう場だと考えている。色々な人々と協力してつくりあげていきたい」。
また、会見では1993年の第1回の開催以来、30年近い歴史を持つシャルジャ・ビエンナーレのプレゼンテーション映像も上映。歴史あるこの芸術祭に携わってきたカシミの解説も添えられた。