人口最少の青ケ島に「留学」しませんか 来春から1年間、中学生募集
■特別な場所
伊豆諸島の最南端に位置する青ケ島。東京本土からの直行便はなく、八丈島経由で船かヘリコプターに乗る必要がある。
「絶海の孤島」と言われるほどの自然は手つかずで、二重カルデラという独特な地形や、夜には満天の星空が楽しめるなどまさに秘境だ。米国の環境保護NGOが発表した「死ぬまでに見るべき絶景13」にも選ばれている。
明治期に最大754人の人口があったが、現在は約160人まで減少。特に少子化は深刻で、昨年度には中学生が一人もいなくなってしまう状況となった。
この苦境を打開しようと立ち上がったのは、島内で製塩会社の代表を務める山田アリサさん(61)。青ケ島に中学生を迎える「留学」を企画し、自らが受け入れ先となって昨年度から実施している。
「島に高校がなく、中学を卒業すれば、みんな島を出る。島民にとって中学校は、子供が島を離れる前の最後の仕上げをする特別な場所。1年でも休校にしたくなかった」。山田さんは企画の思いをこう話す。
■成長を実感
留学生は夏休みなどの長期休暇を除き1年間、島の中学校に通う。放課後は学校のクラブ活動や地域の行事に参加し、海遊びや釣りなど大自然の中で遊んだりして過ごす。
昨年度は1年と3年の男子、2年女子の計3人、今年度も2年の女子2人を受け入れている。生徒たちは全国各地から集まり、青森県からの参加者もいる。
「くじらを実際に見て大きさに感動した」「小さな島ならではの地域の人同士の親密さを感じた」
初めて島内の生活を経験する生徒たちの感想はさまざまだ。自然や地域住民との密接なつながりに新たな発見があるだけでなく、親元を離れた生活に「洗濯などは大変だが、自分でできる達成感もあった」「家族のありがたみも分かった」と話す生徒もいる。
山田さんによると、生徒の親たちも「青ケ島留学で、人に頼り頼られて、生きていく『根っこ』を育てていただいた」と子供の成長を実感しているという。
■島に明るさ
生徒たちの学習発表会に島民も参加したり、島民が生徒たちに釣りを教えたりと、交流も盛んだ。山田さんは「子供たちの素直さ、まっすぐさに、こちらがパワーをもらうし、子供の声が響くと島が明るくなる」と話し、島にとっても良い影響があると指摘する。
島から中学生が一人もいなくなる事態をいったんは回避できたものの、島で生まれ育つ子供の数は少なく、8年後には再び地元の中学生がゼロになってしまうという。山田さんは「学校の存続は、村の存続とイコール。この留学が村の事業に育ってほしいし、それまでは今の形で継続したい」と意気込む。
現在、令和6年4月から7年3月までの3期生を募集中だ。「青ケ島は一人一人が主役の島。そんな島で貴重な中学生生活を過ごしてみて」と山田さん。応募や問い合わせは、電話(04996・9・0241)かホームページ。(古賀達朗)