人類の挑戦を見続けた唯一無二のクロノグラフ、オメガ《スピードマスター》|高木教雄の名作時計デザインの秘密
Q
言わずと知れたクロノグラフの名作、オメガのスピードマスター。この時計はあることを成し遂げたことから、唯一無二の存在である。そのあることとは?
1. 火の中をくぐった
2. 水深1万メートルまで潜った
3. 月面着陸した
A
正解は3!
月面着陸した、です。
人類初の月への有人飛行を実現するアポロ計画を推進していたNASAは、1964年に船外活動用の公式腕時計を選定することを決めた。その際課せられたのは、「高温環境」「低温環境」「気圧と気温」「相対温度」「酸素中気圧」「衝撃」「加速度」「減圧」「高圧」「振動」「可聴音」の全11のテスト。これらすべてに唯一合格したのが、スピードマスターだった。
そして1965年、NASAに正式に認められたスピードマスターは、1969年のアポロ11号に始まる全6回の有人月面着陸に携行されることとなる。また月に向かう途中、機械船の酸素タンクが爆発事故を起こしたアポロ13号では、すべての観測装置が停止する中、エンジン点火のタイミングをスピードマスターで計測し、無事に地球に帰還した。その様子は、トム・ハンクス主演の映画『アポロ13号』で描かれている。
1964年にNASAがテストしたスピードマスターは、第3世代のだった。下の写真は、その復刻モデル。後述するタキメーターを置いたブラックベゼル、同じくブラックのダイヤルにクッキリと浮かび上がる白いペンシル型針という現在に至る“スピマス”のスタイルが確立されたモデルでもある。
1966年にはリューズガードが備わる第4世代が登場。この時ダイヤルにPROFESSIONALの文字が加わった。アポロ11号で月面に降り立った月着陸船パイロットのバズ・オルドリンが着用していたのが、これだ。
1968年にはムーブメントをからへと変更。これも1972年と74年の2度にわたってNASAのテストに合格している。また1997年にはへと置き換わったが、をロジウム仕上げしただけなのでNASA公認は継続された。