中大法学部 茗荷谷キャンパスに移転 都心部へ環境整備
茗荷谷キャンパスは、同大の前身である英吉利(イギリス)法律学校の赤レンガ造り校舎をモチーフとした地上8階、地下2階建て。尖頭アーチが特徴的な重厚感のある外観だ。東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」から徒歩1分と交通利便性も良く、「法と正義の女神」テミス像が出迎える。
キャンパス内は、中央部分が上階まで吹き抜けとなっており開放感をもたらす。講演会などを開催できる特大教室や遠隔授業など、情報通信技術(ICT)を活用した教育が可能な教室などを備え、屋上庭園は学生たちの憩いの場となっている。地域との共生を目指し、大塚地域活動センターや郵便局、保育園なども併設されている。
共用部には、学生が自由に使える学習スペースを多く配置。同大の佐藤信行副学長は「法学の学びには議論が必要」とし、学生たちが集まって活動しやすい環境を整えたという。
図書館と食堂は、同大の創立者らが学んだ英法曹院「ミドル・テンプル」をイメージした。同院では、食事をしながら法律などについて議論する習わしがあるといい、「他者とのコミュニケーションの中で相手に不快な思いをさせずに説得したり自分が知らないことに気付いたりする」(佐藤副学長)。食堂でのコミュニケーションを通じて同院の伝統にも触れてほしいという。
同大では、平成27年の創立130周年に策定した中長期事業計画のもと、学部の特性に応じたキャンパスの再配置、教育コンテンツに合わせた最適化を進めてきた。
令和2年からは法学部3年、法科大学院(ロースクール)2年の計5年間で在学中に司法試験合格を目指す法曹養成制度が始まった。一貫した教育を行うため、法学部を茗荷谷キャンパス、ロースクールを駿河台キャンパスに移転し、連続性を生み出したい考えだ。
また、「法は現実の課題を解決する役割を担う。現実の課題をリアルに感じる環境が必要だ」と佐藤副学長。多様な課題が集結する都心部で、裁判官や実務家などと直接触れ合う機会が増えることが都心キャンパスのメリットだという。
人口が減少する社会に適応できる教育の在り方が問われ、技術発展などにより従来の学問領域を超える必要がある現代において、佐藤副学長は「まさしく教育の力が必要。大学の役割の変化が求められている」と指摘。大学の価値を改革するためにも今後もキャンパスの活用や学部の新設、再配置などを模索していく。
同大では今年度から小石川キャンパス(文京区)も新設した。佐藤副学長は「自分なりの意見を持ち、それを提案できる能力を持つ、イノベイティブな学生を育てたい」と話し、キャンパスと学生の学びの化学反応を期待している。