川崎市南部に「グローバル人材拠点」私大開校へ 産業振興に期待
留学生も受け入れ
「首都圏を代表する東京、横浜の中間に位置する恵まれたこの川崎南部の地で、産業界の未来を支える国際視野を持つ人材、起業家育成をしたい」
新たな私立大学「グローバルBiz専門職大学」を設置する学校法人深堀学園の深堀和子理事長は9月下旬の記者会見で、こう力を込めた。
大学は、同法人が運営する「外語ビジネス専門学校」の校舎内に開校する。同専門学校は、昭和39年の東京五輪で語学面のサポートを担うなどの伝統を誇り、その強みをいかして大学では国際ビジネスの現場に求められる高度な語学力と、流通・貿易業界で使えるコミュニケーション力を習得する「グローバルビジネス学部」を設ける。定員は1学年98人とし、留学生も受け入れる。
大きな節目
貿易やIT、流通業界で活躍する起業家や、プロジェクトリーダーを育成することを目指しており、大学の学長を務める平岩賢志氏は「川崎市は港、空港に近く、国際的に恵まれた環境にある。研究者に加え、物流、メーカーの幹部、管理職経験者が教員に立ち、経営センスを吸収できる」と自信を見せる。
川崎市の大学立地の歴史は大きな節目を迎えている。人口の過度な集中を防ぐことなどを目的とした昭和34年制定の工場等制限法の影響で、川崎市は南部を含む約7割で企業や大学の設立が制限された。平成14年7月に同法は廃止され、対象区域だった川崎区、中原区などで企業の参入が相次ぎ、今年4月には川崎市立看護大学も開校していた。
次世代を見据え
私立大学誕生に地元の期待も大きい。最寄りの京急川崎駅の周辺では、川崎市がグローバル企業の活動拠点の形成などに向けた街づくりを検討しており、市まちづくり局の藤原徹局長は「緊密に連携させていただいて、地域全体の活性化につなげたい」と話す。
地元経済界からも歓迎の声があがる。市内には大企業の製造拠点、研究機関が立地し、中小企業やベンチャーまで幅広い業種や規模の企業が集積している。石油化学コンビナートなど重厚長大産業中心からの産業構造の転換期に差しかかっているだけに、次世代を見据えたビジネスを学ぶ拠点が、産業振興につながるとの期待がある。
中小企業・ベンチャーを支援する川崎市産業振興財団の三浦淳理事長は「大学が川崎、日本の未来につながってほしい」と話している。
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■工場等制限法 首都圏を対象に昭和34年、既成市街地や既成都市区域への産業、人口の過度の集中を防止することを目的に制定された。これにより県内では、横浜市域の約半分、川崎市は市域の中・南部を中心に約7割の地域が指定され、工場や大学などの新増設ができなかった。その後、平成14年7月に廃止された。