【今週見るべき展示会】杉本博司の「オペラ劇場」、 奈良美智展の記録など
映画館に大型カメラを持ち込み、長時間露光で映画のはじまりからおわりまでを1枚のフィルムに閉じ込めるーー杉本博司のコンセプチュアルな代表的シリーズ「劇場」。本展は、その流れをくむ杉本の「オペラ劇場」シリーズを国内で初めて一堂に集めた展覧会だ。「オペラ劇場」の制作のために、杉本はまずイタリアの古き良きオペラハウスを巡り、舞台上にスクリーンを仮設。そこで自身が会場に合わせて選んだ映画を上映し「劇場」と同じ手法で撮影を行った。写真のなかで映画1作品ぶんの光は白い矩形となって現れ、その光がオペラ劇場内部の装飾を浮かび上がらせている。
古歌の語句・趣向などを取り入れ、引用し作歌する和歌の技法「本歌取り」に、日本文化のかたちを見出してきた杉本(9月17日からは兵庫県・姫路市立美術館で『杉本博司 本歌取り––––日本文化の伝承と飛翔』が開催)。20世紀のアメリカの映画館も、じつはオペラハウスの装飾を引用・模倣してつくられたという事実も、杉本が本シリーズの制作を進める動機になっているようだ。
本展では、イタリアで制作した「オペラ劇場」に加え、演劇を愛したマリー・アントワネットが自身のためにつくった小劇場、パリ・ガルニエ宮オペラ座で撮影したフランスでの2作品も披露。前者は、2018年、ヴェルサイユ宮殿の小トリアノンで行われた個展『SUGIMOTO VERSAILLES』で新作として発表されたもので、後者は杉本による戯曲『At the Hawk’s Well/鷹の井戸』が上演された際、舞台上につくられた能舞台も含めて撮影されている。
(画像) 《Villa Mazzacorrati, Bologna》 2015年 “Le Notti Bianche” ゼラチン・シルバー・プリント
杉本博司『OPERA HOUSE』
会期:~11月6日(日)
会場:ギャラリー小柳
住所:東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル 9F
時間:12:00~19:00
休館日:日・月曜、祝日
※「ART WEEK TOKYO」期間中の11月3日(水・祝)~6日(日)は
10:00~18:00(無休)
料金:無料
電話:03-3561-1896