大学入学共通テスト、令和7年に再編 問題例を読み解く
◆教科書だけでは解答困難
<情報Ⅰ>
「情報Ⅰ」の問題例は4つの大問で構成。第1問は、交流サイト(SNS)やメール、インターネットサイトなどを使う際の注意点や情報の信憑(しんぴょう)性の判断といったリテラシー面などについての出題だった。鉄道の路線図や旅行会社のサイトなど身近な題材に関し、情報がどのような基準に基づいて整理されているかを考察する「情報デザイン」の考え方が試された。
第3問では、460円の商品を買う際に510円を支払って50円の釣り銭を受け取るといった「上手な払い方」を巡り、それを計算するプログラムの基本構造や改善プロセスを考えさせる設問が出題された。
浅野氏は、「教科書を一通りやっているだけでは解答が難しいかもしれない」と分析。その上で、「単に用語などの知識を問うのではなく、知識をデータや資料と組み合わせて活用したり、考察したりする力が必要となる。身の回りの事象を『なぜ』という疑問と結びつけて考えるトレーニングが不可欠となるだろう」と助言している。
◆時代と地域のつながり意識を
<歴史総合、日本史探究>
「歴史総合、日本史探究」の第1問は、近現代を中心に世界史の流れの中で日本史を学ぶ「歴史総合」からの出題。移民や出稼ぎなど「人やモノの移動とその影響」について、生徒の発表文や図表などを読み解き、歴史的な知識を適切に関連付けることができるかどうかを試した。
第2問以降が「日本史探究」からの出題となった。第6問の問4では、第二次世界大戦直後に警察官や占領軍の憲兵がともに交通整理をする写真と解説文に目を通させ、「二人が同時にこれに従事しているのはなぜだろうか」といった疑問をどのように調べれば検証できるかを尋ねた。
続く問5では、提示された「模式図」を基に、年代別に国内外の産業発展を巡る相互の影響を考察させた。浅野氏は「縦(時代)だけでなく、横(地域)のつながりを意識した学習が重要」と解説。こうした出題傾向は「歴史総合、世界史探究」でも同様で、「限られた時間内に的確に読み解いていく訓練が必要となる」。
◆「話す」「書く」間接的に問う
<英語(リーディング)>
話す力や書く力も含めた「可能な限り総合的な英語力を評価する」とした作問方針が示されている「英語」では、リーディングの問題例として2つの大問(A、B)が公表された。Aでは、生徒がスマートフォンを使うことについての是非を巡り、自分の意見を述べる文章を書くという場面設定。教師、心理学者、保護者、高校生、校長の立場の異なる5人からの意見を読み、それぞれの趣旨とその根拠を理解できているかどうかなどを確認した。
Bでは、「環境に配慮したファッション」に関する文章の作成をテーマに、自身の原稿に対する教師の助言を踏まえて推敲(すいこう)する場面で、段落のトピックセンテンスや全体の要約になる文、文と文の意味関係を表す語句などを選ばせた。「スピーキングやライティングの力を間接的に問う工夫が感じられた。日常的な学習では、まとまった英文を読んで概要をつかみ、要約する訓練が役立つ。大学入試センター試験時代を含めた過去問も参考になるだろう」(浅野氏)
◆文章量多く苦戦予想
<数学Ⅱ・B・C>
「数学Ⅱ・B・C」は出題範囲が増えることに伴って試験時間が10分増える。選択問題の一つである第7問が、新たに出題科目となる数学Cから「複素数平面」に関する出題だった。コンピューターソフトを用いて描かれた点について考えるもので、初めて見る問題に対して設定を理解する読解力や方針を立てる力が求められる。
浅野氏によると、複素数平面に関する設問は大学入試センター試験時代にも出題されており、「当時と比較すると、今回の問題例では会話文の読み解きなども必要で、大学入学共通テストらしい出題となっている」。ただ、問題例は全体的に文章量も多いため、「70分の試験時間では苦戦する受験生も多いと思う」とも語った。
「数学Ⅰ・A」は新学習指導要領で追加された「データの分析」の単元から、世界の国際空港に関する統計やグラフを読み解く問題が出された。「外れ値」や「仮説検定の考え方」の理解とともに、数学的な考察力が求められる設問だった。