ヒップホップ映画の金字塔『ワイルド・スタイル』。40周年を記念して特別上映。
ヒップホップ文化が生まれて間もないニューヨークのサウス・ブロンクス。そこでは、ラップ、DJ、ブレイクダンス、そしてグラフィティと、ヒップホップを構成する4つの分野それぞれが、文字通りストリートカルチャーとして街のいたるところで繰り広げられていた。
そんな黎明期のシーンの熱狂を克明に捉えたのが、1982年公開の映画『ワイルド・スタイル』だ。覆面グラフィティライターを主人公に、彼の周囲に息づくヒップホップカルチャーとプレイヤーたちの姿を映し出した。架空のストーリーの体裁を取ってはいるが、出演者のほとんどは自分自身を役のモデルとしたプレイヤーたちだ。ドキュメンタリーとも言えるほどリアルにシーンの様子を描いた本作は、翌1983年には日本でも公開。後に花開く日本のヒップホップカルチャーにも大きな影響を与える一作となった。
初公開から40年の時を経て、再び上映となる本作。主人公のグラフィティライター、ゼロがグラフィティをボムする姿や、クルー同士の繰り広げるラップバトル、ライブ会場の客席で自由に発生するブレイクダンスなど、今なおその衝撃と魅力は衰えることはない。
映画のラストシーンの舞台は、野外音楽堂での大イベントだ。ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティそれぞれが一つとなり、熱狂とともにエンドロールを迎えるその姿は、後に世界中を席巻するヒップホップカルチャーの未来を予感させる。
ヒップホップ文化が広く浸透した2022年の今でも、いやだからこそ、『ワイルド・スタイル』は観るものに新鮮な驚きと発見を与えてくれる。ヒップホップカルチャーの原点を、ぜひスクリーンで体験してほしい。
ニューヨークのサウス・ブロンクスに住む青年レイモンドは、覆面ライター「ゼロ」として地下鉄にグラフィティを描き、評判を呼んでいた。そんな中、グラフィティの取材に訪れた新聞記者と出会い、その繋がりで仕事としてキャンバス作品を描くよう依頼される。時を同じくして野外音楽堂で行われるイベントの会場の壁画も頼まれたレイモンドは、上手く作品が描けないことに悩むが...。1982年制作。82分。監督:チャーリー・エーハン。出演:リー・キノネス、ファブ・ファイブ・フレディ、サンドラ“ピンク”ファーバラほか。2022年9月2日より、〈ヒューマントラストシネマ渋谷〉〈新宿シネマカリテ〉他にて全国順次公開。