貝づくしメニューに“痛風鍋”。新しい呑みの形を提案する〈三茶貝介〉。
「寿司店のネタをつまみに呑みたい」。そんな発想から生まれたのがこちらのお店。ネタケースにずらりと並ぶのは、店名の“貝”と“介”が表す通り、さまざまな貝と蟹や海老。三枚おろしにする魚は置かず、アン肝、白子、魚卵など、左党のツボをついた品々も。寿司職人仕込みの手さばきで、きっちりと丁寧に仕込んだネタが自慢だ。
お通しは、名刺代わりの「平貝の磯辺焼き」を手渡しで。肉厚な平貝の食感、海苔の風味、醤油の香りが食欲に火を点ける。生牡蠣、蛤の酒蒸し、貝ひも串、磯つぶ貝旨煮など、貝づくしメニューからまずオーダーしたいのは、刺身の「貝介ミックス盛」。赤貝、みる貝、青柳など、内容は日替わりで7~8種類のネタが盛り込まれてくる。このボリュームで2,000円に驚きつつ、食べてさらに幸せを実感すること必至。繊細な貝の風味を引き立てるようにと、煎り酒が添えられてくるのも気が利いている。
刺身の次は、焼き物、蒸し物などをぜひ。あわび串や車海老の塩焼きをつまみつつ、日本酒をちびちび飲むもよし、茹でたてのくり蟹や蒸し牡蠣に白ワインを合わせるもよし。フルフラットなカウンター越しに、調理している様子を眺めながらオーダーを決めるのもいい。
寒い時期に楽しみなのが、その名も「痛風鍋」。白菜、春菊をしいて和出汁をはった鍋に、ぷっくりと身がはった牡蠣、みるからに濃厚そうなあん肝、ツヤツヤと輝く白子をこんもりとトッピングして運ばれてくる。痛風まっしぐらと言わんばかりの、背徳感たっぷりのボリュームがたまらない! あん肝は、味噌と胡麻油を加えてしぐれ煮にしてあるので、鍋に火が入るまで日本酒のアテにしてつつくのもおすすめだ。
この店らしさはシメにも。「貝汁」というシンプルなメニュー名の、赤出汁のしじみ椀で、汁と具の盛り付けバランスを間違えたかの如く、うず高くしじみが入ってくる。たっぷりと食べて飲んだ胃と肝臓が喜ぶ一杯だ。