荻野吟子の調査報告書が完成、発売 埼玉・熊谷市
吟子は日本で初めて医術開業試験に合格し、女性医師第1号となった人物。市は吟子について造詣の深い県内や北海道の研究者3人を編集委員に委嘱、委員が調査・研究・執筆・編集に2年をかけて完成させた。新発見や初収録の資料についての調査、吟子が生活した北海道せたな町、今金町で調査を行ったほか、歴史資料も多く収録した。吟子に関する書簡やはがき、新聞や雑誌の記事、写真など200点以上が解説付きで収録されている。
これらの資料から、吟子がよく知られる医師としてだけでなく、女性活動家としての活動の側面も持っていたことにスポットが当てられた。また俵瀬村(現・熊谷市)生まれの吟子が幼少時だけでなく、北海道に渡った後にも故郷に戻ってくるなど、生涯を通じて熊谷市との関係が深かったことも明らかになった。
市史編さん室の蛭間健悟主査は、「吟子は社会活動にも熱心で、女性の代表者として廃娼運動に取り組んだり、明治24年の濃尾地震後に孤児の女児が売られていることを知り東京に連れてきて養ったりして、女性の地位向上を図った」とした上で、「吟子に関することについてこれまでの通説やイメージの誤りを訂正することもできた」と指摘している。
同市の調査報告書は「仏像・仏画1」「中性の石造物」に次ぐ3冊目。
市役所、市立熊谷図書館、市立江南文化財センター、市立妻沼展示館内の市史編さん室のほか、市内の須原屋熊谷店、戸田書店熊谷店、むすぶん堂などの書店で販売している。現在のところ、市外での販売予定はないが、発送は可能という。