高校生「私の推し本」書店にコーナー 「手に取りたくなる」ポップも
コーナーで紹介する新書などは33冊。テーマは脱走兵、地球温暖化、花粉症、Jポップとダンス、羽生結弦選手――などさまざまだが、スマートフォンや友人関係、承認欲求といった生徒には身近なものを取り上げた本が多い。生徒35人が作ったポップ広告が添えられ、本の魅力をイラストなども交えて紹介。「私はスマホの使用時間が約3時間も減りました」(新潮新書「スマホ脳」)、「生きていくための処方箋」(ちくまプリマー新書「友だち幻想」)などと目を引く言葉が並んでいる。
開設は4月9日。コーナーから既に数十冊が売れており、ある女性客はポップ広告をじっくり見て「どれも読みたい」と話し、悩んだ末に2冊を購入したという。寺田瞳店長は「新書を手に取ることが少ない若い世代もコーナーに立ち止まっています」と、手応えを感じている。
川西北陵高では2021年度前半に、当時の2年生のうち235人が「総合的な探求の時間」で「新書研究」に取り組んだ。生徒がそれぞれ、関心のある新書を読み込み、ポップ広告を制作。粗筋の紹介に終わることなく、「思わず手に取りたくなるように」と表現を工夫し、簡潔で心に響く感想を考えて盛り込んだり、目を引くキャッチコピーを作ったりした。10月にプレゼンテーションなどを行って優秀作品35点を選び、校内で展示した。
コーナー開設のきっかけは、「新書研究」を担当した稲中優子教諭が、1人の女子生徒から母親と紀伊国屋書店川西店に行き、本を選んだ話を聞いたことだった。「あれこれ話し合って選んだ時間の楽しさが伝わってきた」と稲中教諭。生徒からも「同じ経験を他の人が味わう機会を作ることができたら」と提案があり、店に打診。寺田店長も「地元の学校とコラボした取り組みをしたかった」といい、「推し本」コーナーの設置がとんとん拍子で決まった。
展示されているポップ広告のうち、ともに「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)を選んだ山際祐里奈さん(3年)は「非行をする少年たちには生活環境も影響していることを知り、伝えたいと思った」と制作の狙いを語った。山内美来さん(同)は「小説が好きで読んできたが、発見が多かった新書にもこれからは関心を広げたい」と話した。
また、コーナーのレイアウトや構成も生徒2人が書店員のアドバイスを受けながら担当した。井上魁さん(2年)は「来店者へのインパクトを考えて本やポップを配置しているなど興味深かった」、須川葵さん(同)は「学校では学ぶことができないことが多く、刺激を受けました」と話した。
稲中教諭は「地域の人たちに喜んでいただいていると聞いた。心温まる交流ができ感謝している」と話した。
コーナーは5月末まで。問い合わせは紀伊国屋書店川西店(072・740・2622)。【土居和弘】