AIを駆使し次世代のラグジュアリーファッションを担う才能の発掘が加速
その最新の動きの一つがデジタルファッションデザイナーのための高級ファッションインキュベーター「The SYKY Collective」(SYKYコレクティブ)だ。SYKYは、元Ralph Lauren(ラルフ ローレン)のチーフ・デジタル・コンテンツ・オフィサーだったアリス・デラハントが2022年に設立した高級ファッション・プラットフォームであり、従来の高級ファッションとウェブ3の新しい世界とのギャップを埋めることを使命としている。今回のインキュベーター発足は、その実現に向けた次のステップだ。
デラハントは声明の中で、 「私たちは、現在デジタル世界の中でデザインを行っている人たちが、次世代の大手ラグジュアリーメゾンになると考えています。SYKYコレクティブはこれらの次世代高級メゾンの多くの出発点になれると信じています」 と述べた。
インキュベーターへの参加者は、伝統的なラグジュアリーファッションの世界やウェブ3の世界から来た業界のリーダーたちから指導を受けることができる。たとえば、英国ファッション協会(BFC)CEOのキャロライン・ラッシュ、Calvin Klein(カルバン・クライン)のCMOであるジョナサン・ボトムリー、Vogue(ヴォーグ)のクリエイティブ・ディレクター、マーク・グイドゥッチ、Red DAO(レッドダオ)創業者のメーガン・カスパーといった顔ぶれだ。
しかし、これはあくまでもスタートに過ぎない。1年間の独自カリキュラムにより、技術力やデザイン力だけでなく、事業規模拡大や商品流通の方法など、より戦略的な面でも、ラグジュアリーなデジタルメゾンの立ち上げに必要なスキルを持った卒業生を輩出することができる。
プログラム参加者は、BFCが会員デザイナーや新進デザイナーに提供しているカリキュラムを利用することができる。BFCのカリキュラムの卒業生にはフィービー・ファイロ、ジョナサン・アンダーソン、シモーネ・ロシャなどがいる。さらに、伝統的なファッション業界の定期的イベントへの参加、SYKYプラットフォームでのジェネシスコレクションでの展示、伝統的な高級ブランドとのパートナーシップの可能性などの特典がある。
SYKYコレクティブは、毎年新しいデジタルデザイナーたちを募集する。第1期生は10名となる。現在募集中で、5月2日に締め切り、6月上旬に合格者が発表されて6月末より開講する予定だ。
こうした取り組みは、一つだけではない。フランスのEコマースプラットフォームMonnier Paris(モニエ・パリ)が、Decentraland(デセントラランド)ならびにデジタルファッションブランドRepubliq(リパブリック)とのパートナーシップによって、Metaverse Fashion Week(メタバース・ファッション・ウィーク)にウェブ3クリエイターのためのMonnier Paris Fashion Prize(モニエ・パリ・ファッション・プライズ)の募集を行っている。ファイナリストは、応募作品を3Dプリント技術で実際のバッグに仕上げ、NFTを添えてモニエ・パリで販売することができる。
ブロックチェーンサービスArianee(アリアニー)のCEOであるピエール・ニコラス・ハーステル、Institut Français de la Mode(フランスファッション研究所)のマネージングディレクターのザビエル・ロマテット、Epic Games(エピック・ゲームス)のUnreal Engine(アンリアルエンジン)マネージングディレクターのエンティン・ステース・ポールを含む審査員によって5名のファイナリストが選ばれ、9月に一般投票によって最終受賞者が決まる。
モニエ・パリCEOのディア・エリヤクビ・ブリエによると、デジタル人材にスポットを当て、現実世界との橋渡しをすることが目的だという。ブリエはインタビューに「私たちは、彼らが未来の高級ファッション業界の一大勢力になると確信しています」と答えている。