食事は軽めの「カツサンドシフト」? 幻に終わったおやつの「富士宮新定跡」[観る将が行く]
発端となったのは、竜王戦七番勝負第3局が行われる静岡県富士宮市が開催した「竜王戦おやつ選びコンテスト」。市内の菓子店などから対局者が食べる「おやつ候補」を募り、市民とファンの投票などをもとに、おやつメニューを作るという企画だ。
藤井聡太竜王のタイトル戦でのおやつチョイスは観(み)る将ファンから大きな注目を集める。昨年の竜王戦でも京都・仁和寺対局で食べた「くま最中(もなか)」が「かわいい」と話題となり、提供した和菓子店は多くの将棋ファンが訪れる”聖地”のような存在になった。
なるほど。それほど注目度が高いなら、対局当日だけでなく、もっと長い期間、話題にしてもらおうということか。しかも、この方式なら対局で実際に選ばれる品以外にもいろんなスイーツを紹介できるし、市民の間でも竜王戦を話題にしてもらえる。まさに一石三鳥……。
と、感心しながら応募38品のラインアップを見ていると、思わず目を疑った。
ん? ヒレかつサンド?
フルーツをふんだんに使ったケーキやプリンが並ぶ洋菓子部門の中にどーんと鎮座するヒレかつサンド。もちもちのパンに挟まれた分厚いヒレかつは、なんだか見るからにやる気満々な感じで、存在感も半端ない。
応募したトンカツ屋さんはお店のブログで「富士宮市のこのお祭りを盛り上げたい。参加することに意義あり!」と書いておられたが、当然、議論にはなる。
カツサンドはおやつか否か――。
「もしおやつ候補に選ばれたら、注文されるかもしれませんよ」
投票期間中、そう話していたのは、藤井竜王をデビュー当時から取材する将棋担当のYくんだ。
理由を問うと、Yくんいわく、そもそも藤井竜王は結構、トンカツが好きなのだとか。
「対局中の食事でカツカレーを頼む姿はよく見ますし、実は藤井竜王はかなりの大食漢。カツカレーから、間食でカツサンドみたいな離れ業も0%ではないと思います」
なるほど。おやつと言えば甘い物というイメージだったが、そもそもおやつは間食という位置づけだ。対局に必要なエネルギー補給ができればいいわけで、必ずしも甘い物である必要はないかもしれない。
加えて、Yくんとの議論で挙がったのは、竜王戦での食事とおやつの注文の仕方だ。
2日制で行われる竜王戦七番勝負では、対局の前日に2日分の昼食とおやつをまとめて注文する。対局者は長丁場の戦いを想定して、何を食べるか計画的に選ぶことになるのだが、もしおやつでカツサンドが気になったら、昼食に少し軽めのものを選ぶなど、“カツサンドシフト”を敷くことも十分、考えられるというわけだ。