40歳で逝った女性の遺志継ぎ、若手の芸術活動400件に9500万円寄付 神戸文化支援の30年
神戸文化支援基金(愛称=こぶし基金)の前身は「亀井純子文化基金」で、1992年に創設。神戸市在住で、90年に40歳の若さで病没した亀井純子さんの遺族から託された1千万円が基になった。亀井さんは発表の場が少ない若手芸術家に思いを寄せており、その遺志を引き継いだ。
当時、神戸・元町で海文堂書店を営み、多様な文化活動に携わっていた島田さんが中心となって基金を運営。その後も趣旨に賛同する個人からの寄付が続き、徐々に支援対象を広げてきた。これまでの助成は388件に上る。
その一つが、多分野の芸術家が集まり、95年の阪神・淡路大震災後に意欲的な活動を展開してきた「芸術と計画会議(C.A.P.)」。代表の下田展久さんは「市民基金の草分けとして、顔が見える関係の中で意志のこもったお金を手渡し、多くの人をつないでこられた」と評する。
2011年の東日本大震災でも、被災地での文化的な活動をサポート。宮城県出身の画家、加川広重さんが制作した巨大な水彩画「雪に包まれる被災地」(縦5・4メートル、横16・4メートル)などを神戸に運び込み、公開を果たした。
新型コロナウイルス禍では、日本玩具博物館(姫路市)など打撃を受けた県内の施設や団体を緊急支援。素早い対応に「励まされた」といった声が相次いだ。
「構想があったわけではなく、思いも寄らないことが積み重なってたどり着いた、という感じ。さまざまな危機に鍛えられ、何より多くの方に支えていただいたからこそ」と笑顔を見せる島田さん。「30年は通過点。力のある若い世代が今後も育ててくれると信じている」と未来を見つめる。
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同基金は30周年を記念し、兵庫県にゆかりのある30人・団体に「こぶし志縁賞」を贈呈。女神像などの作品が高く評価される画家の石井一男さんや、良質な映画の紹介に尽力する元町映画館などが選ばれた。
11日までギャラリー島田(神戸市中央区山本通2)で、受賞者が手がけた絵画や映像、著作などをメッセージとともに紹介する記念展を開催中。午前11時~午後6時(最終日は同4時まで)。無料。同ギャラリーTEL078・262・8058