染色家・柚木沙弥郎と辿る100年の軌跡。生誕記念展が〈日本民藝館〉で開催中!
「新しいものも古いものも、一緒なんだよ。ずーっと一本でつながっているから」
100歳の染色家、柚木沙弥郎が言う。傍らには、2017年に手がけたツバメの模様の型染布や、1950年代に作ったブルーとグリーンの注染布。どちらも生き生きと、明るい力を放っている。
20代のころ、〈日本民藝館〉の創設者である柳宗悦の思想や染色家の芹沢銈介の作品と出会い、染色の道を歩き始めた柚木。以来、染めの仕事を中心に、版画や絵本、ポスターなど、休むことなく作り続けている。2008年にはパリで個展を開き、今も新たな創作プロジェクトが進行中。そんな柚木の原点である〈日本民藝館〉で現在、『生誕100年 柚木沙弥郎展』が開かれている。柳宗悦自らが蒐集した初期作品から近作まで、館所蔵のコレクション約110点がのびのびと並ぶ展示は圧巻のひとことだ。70年間にわたって生み出してきたそれらの作品をぐるりと見てまわった柚木いわく「注染がとてもいいですね」。
注染とは字のごとく、生地の上から染料を注いで染める型染の技法。糸の芯まで染め抜かれるこの技法を、柚木はずっと愛してきた。
「ひとつのモチーフを繰り返す注染は、型染の伝統を非常にうまく利用した技法です。それはローカルであると同時にモダンであると、芹沢先生も言っています」
その注染による縞模様の布とイギリスのウィンザーチェアを組み合わせるなど、柚木作品と古今東西の古物とが並んでいるのが2階の大展示室。数千年前の縄文土偶やドゴン族の仮面と隣り合った型染は、堂々としてみずみずしく、喜びに満ちているように見える。
「古いものはのんきだね。悠々としている。横溢(おういつ)している。こういうプリミティブなものと僕の作品とが一緒に陳列されているのを見ると、非常にスマートで、僕のワクワクする気持ちが刺激されますよ。互いに直接的な関係はないけれど、僕がなにかを作る時にどうしても欲しいもの、つまり、興奮を与えてくれるんだね」