コラボは学びの機会。フレンチと和食「35歳トップシェフ」の発見
そしてその変化のスピードは、加速度的に増している。一説によると、平安時代の人が一生に得る情報を、私たちはわずか1日で得ているという。情報だけではない。地球の裏側の食材をほんの数日で手にすることもできるし、加工や保存の技術も次々と開発されている。表現の幅も広がっている。
この忙しない世界で、職人であり、食を通した表現者でもあるシェフたちは、どのように「いま」を切り取っているのだろうか。
オープンから2年経たずにミシュラン2つ星、「アジアのベストレストラン50」で2位に輝いたモダンフレンチ「SÉZANNE(セザン)」のダニエル・カルバートと、予約の取れない店として知られる日本料理「山﨑」の山崎志朗。去る3月、トップランナーの二人がコラボレーションした。ジャンルを超えた共創で見えてきたこととは。
──今回のラボレーションはどのように生まれたのでしょう?
カルバート:私が山崎さんの店に食事にお邪魔したのがきっかけで、色々と話をするようになりました。私はフランス料理を学び、2年前に海外から日本にやってきたイギリス人。山崎さんは日本料理を学んだ日本人で、これから海外に出たいと思っている。そんな逆方向のベクトルを持っている者同士がお互いのアイデアを交換する機会になればと思ったのがきっかけです。
それに、セザンは日本にあって日本の食材を使っているので、私は日本料理の技術も活かした料理を作りたいとも思っています。山崎さんの「あん肝」は絶品で、同じテクスチャを出したいと試行錯誤してもなかなかうまくできない。食べただけではわからないから、一緒に料理を作ってマスターするのも目的でした。
山崎:こんな大掛かりなことをしなくても、言ってくれれば教えるのに(笑)。僕はアメリカ、フランス、香港など、世界各地でキャリアを重ねたダニエルから学びたい気持ちが強い。短期間の研修などを除いて、カウンタースタイルの日本料理店でキャリアを重ねてきたので、テーブルで食べる料理を作るのも初めてでした。
将来海外に出店するならば、テーブルで食べる食事も考えていかないといけません。ダニエルが、カウンターで出すのとは違う距離感、そして(山﨑の3倍にあたる)24席に対して、一皿一皿を完成度高く仕上げていくオペレーションにも興味がありました。
カルバート:こうしたコラボレーションはチームにとっても重要です。例えば私のキッチンの日本人スタッフにとっては特に、フランス料理店で修業したから日本料理の食材も技法も知らないというのでは将来的に困るでしょう。日本の文化を一緒に学びたいと思いました。