日本初個展。劉建華のクールなオブジェが問いかける、熱い問題とは?
今回のメインとなる《遺棄》は白い磁器で作ったオブジェが床一面に広がっているというもの。よく見るとそれはカバンや水筒、靴など、身近なものの形をしている。その中には割れたり、壊れたりしたものも。私たちは普通に暮らしているだけでゴミを大量に排出している、そんな状況への批判も読み取れる。
最新作《塔器》は瓶や壺の口と首の部分だけを切り取ったもの。その下にあったはずの胴の部分に何が入っていたのか、想像をかき立てる。《儚い日常》は《痕跡》の造形も思わせる、浮遊する枕のような作品だ。《兆候》は陶磁器の仕上げに使う流動的な釉薬のようにも感じられる。
展覧会のタイトルにある「中空」は器の空洞を連想させるが、「中空を注ぐ」という文章になると途端に不自然なものになる。劉はこの文章に内容のない無意味さを込めている。空虚なものに満ちている現代を、彼はこんなふうに感じているのだ。
〈十和田市現代美術館〉青森県十和田市西二番町10-9。2023年6月24日~11月19日。9時~17時。月曜(祝日の場合はその翌日)休。一般 1,800 円(常設展込み)。高校生以下無料。