もつれた開幕局、「軍曹」永瀬王座が粘り勝ち 棋聖戦第1局
平成21年にプロ入りした永瀬王座は「将棋に大切なのは才能ではなく努力」が持論。将棋の研究に打ち込む情熱は将棋界でも屈指で、「軍曹」という異名は将棋に向き合う姿勢の厳しさから付けられた。
デビューした四段の頃、公式戦でアマチュアに敗れた。発破をかけられた実力者の鈴木大介九段(47)に1対1の練習対局「VS(ブイエス)」を申し込んだが、「弱い君と練習しても自分の勉強にならない」と断られた。
しかし、永瀬王座は食い下がり、1回だけVSをすることに。鈴木九段は指すうちにその真面目な姿勢に心を打たれ、月に1回はVSを行い、その回数が2回、3回と増えていく。VSをする関係は7~8年に及んだ。
藤井棋聖は10歳年下の後輩ながら、デビュー間もない頃からその強さに着目していた。VSを申し込み、今も互いに東京や名古屋を行き来して研究する仲。今回の五番勝負を前に意気込みを聞かれると、「(藤井棋聖に)たくさん指してもらっているので、その成果を発揮できれば」と語っていた。
藤井棋聖の師匠、杉本昌隆八段(53)は「藤井棋聖が高校生時代に学業との両立を図って充実した生活を送れたのは、永瀬王座のおかげ」と語る。「2人は将棋の真理を追究できることを喜んでいる」と指摘した上で、「指すからにはタイトルを取るつもりでしょうが、それを度外視した心境になれる関係だと思う」と、対局者たちにエールを送った。