「すごい名前を背負わせて…」 山本周五郎賞射止めた作家の永井紗耶子さん
大作家の名を冠した山本周五郎賞を射止め、16日の記者会見で「すごい名前を背負わせていただいた。気を引き締めて頑張らないと」と喜びをかみしめた。
受賞作「木挽町(こびきちょう)のあだ討ち」(新潮社)は、江戸期の芝居小屋を舞台にしたミステリータッチの長編。武家生まれの美少年が、父親をあやめた下男を見事に斬った「あだ討ち」の意外な真相を描く。
自身は大の歌舞伎ファン。「忠臣蔵」などのあだ討ち物はなぜ人気か-。その思索の先に、市井の人々の苦悩をすくい上げ、「正義」の意味を問う物語が生まれた。「忠義や孝行という美徳も、ただ上から押し付けられたものだったら窮屈さを生む。どう解き放たれ、幸せを見つけるか。現実社会で闘い、追いつめられている人に少しでもほっとしてもらえたら」
神奈川県出身。テレビの大河ドラマや時代劇を夢中で見る小学生だった。新聞記者などを経て、30代で作家デビュー。ジャンル選択に迷ったときも「ダイナミックな歴史物が好き」と原点を思い返し前に進んだ。
仕事前はよくスマホで落語を聞く。小気味よい噺のリズムに身を浸すと、時代物を書くスイッチが入る。
「違う時代の風景を描くことで目線は変わる。生きる上での希望や救いが見えることもある。歴史って面白い」(海老沢類)