ポーラ美術館が新収蔵のメアリー・カサット《劇場にて》を初公開。コレクション展を今夏開催へ
。同作が、7月12日より初めて公開されることとなった。
女性や子供の機微を鋭くとらえたメアリー・カサット(1844~1926)は、19世紀後半におけるパリの画壇で前衛の画家として活躍した数少ないアメリカ人の女性印象派画家。1874年よりパリに定住し、77年の第3回印象派展にドガの紹介で初めて参加して以降、大胆な構図、日本の版画の非対称性や高いところから見おろす視点、近代生活の主題を取り入れた絵画表現を追究し、高い評価を獲得した。
同作は、印象派が取り上げた近代生活の主題であるパリのオペラ座を描いたシリーズの1点。桟敷席に座っている女性の後ろには鏡があり、シャンデリアをはじめとする劇場の情景は、その鏡に映し出されたものとして描写されたものだ。観客の描かれていない鏡像としての情景は抽象的に表現されているいっぽう、女性の表情やアクセサリーは入念に描かれている。また、モデルの上半身を覆うように描かれた装飾的な扇が画面に彩りをもたらしながら、当時のパリの華やかな生活を見せている。
ポーラ美術館は、近代から現代までの作家による優れた作品を積極的に収集・展示。2020年にゲルハルト・リヒター作品を約30億円で落札し
話題を集め、また、同館コレクションにおいて核となる印象派絵画に女性画家の優品を加えることにも取り組んでいる。
新収蔵となるカサットの作品をはじめ、モリゾ、モネ、ルノワールといったポーラ美術館の西洋絵画コレクションを紹介する展覧会が7月12日~12月3日の会期で開催。リヒターなど近年新収蔵した現代の作品も展示され、同館コレクションの名品が味わえる機会をお見逃しなく。